そんな遊牧民族の1つ「ベドウィン」が結婚披露宴などで提供する料理「Whole stuffed Camel(詰め物をしたらくだの丸焼き)」は、世界最大の料理としてギネス世界記録に認定されている。そのレシピは次の通りだ。
「玉子を茹で、殻をむいて魚に詰める。その魚を調理し、チキンに詰める。そのチキンを調理し、焼いた子羊に詰める。子羊をラクダに詰めたら、柔らかくなるまでじっくり煮込む」

ラクダを柔らかく煮込むには、20から24時間かかるそうだ。ラクダ1頭で、披露宴の参加者80人をもてなすことができるという。
このレシピでは、「小さな食材を、大きな食材へ詰める」という行為をひたすら繰り返している。読んでいると「料理の作り方」なのか、ロシアの入れ子人形「マトリョーシカの組み立て方」なのか、わからなくなってしまうほどだ。だが、この通りに作れば、ベドウィンの人たちが食べるラクダの丸煮を楽しめるらしい。

(画像はイメージです。本文とは関係ありません)
だが、旅を続ける遊牧民であるはずのベドウィンの人たちが、ラクダ一頭をまるまる煮込める、巨大サイズの鍋を持ち歩いているという事実は驚きだ。そう言えば、カフェで仕事をする「ノマドワーカー」たちも、大きなスーツケースを持ち歩いている気がするが、あれはそういうことなのだろうか?(どういうことなのだろうか?)
ベドウィンの人たちが移動する間、ラクダを煮込む巨大鍋を運搬しているのが、ほかならぬラクダ自身であろうことに思いを馳せると、少しだけ胸が痛む。
