沼袋「ごたる」の「博多らーめん」

その子(一杯)に出会ったのは、西武新宿線沼袋駅から徒歩3分ほどの場所にある「ごたる」でのこと。吸い込む息が肺を内側から痺れさせるような冬の夜。ほんのりともった丸みのある灯りと「博多ラーメン」の字につられ、私はふらふらとその店へ吸い込まれた。

西武新宿線沼袋駅から徒歩3分ほどの場所にある「ごたる」
「ごたる」

平日の20時近く、先客は一名。店内を満たすのは柔らかなとんこつの香りとラジオパーソナリティーの声だけ。カウンター席の一番端に腰掛け、メニューを眺める。

小学生の頃“生活”の時間に作った壁新聞を思い起こさせるような手書きのメニュー表。しばらく眺めてから、「博多ラーメン(税込650円)」を注文した。麺の硬さはフツウ。私は昔から冒険のできない男なのだ。

西武新宿線沼袋駅から徒歩3分ほどの場所にある「ごたる」のメニュー

ラーメン屋とは思えないほど静かで穏やかな空間。4分ほどぼんやりと待っていると目の前のすだれが上がり、ラーメンが目の前に。「変わった登場の仕方だな」、第一印象はそれだった。

ラーメンが出てくるすだれ
すだれの向こうからやってくる

少し泡だった乳白色のスープ。たっぷりのネギに、細切りのキクラゲ。隅に見えるのはチャーシュー。派手な飾りつけを好まない、シンプルな姿に好感が持てる。

沼袋「ごたる」の「博多ラーメン」

沼袋「ごたる」の「博多ラーメン」
泡だつスープ

ほわりと舌のうえに広がるまろやかさ。“とんこつ”から連想される重さやコッテリ感はなく、旨みがストレートに口の中に広がる仕上がりだ。素直でクリーミー、なめらかなコクのあるその性格(味)に、私はすっかり心を掴まれてしまった。

沼袋「ごたる」の「博多ラーメン」

博多から仕入れているという超極細麺は、スープとよく絡む啜りやすい一品。噛むとふっつり切れる食感がクセになる。シャキシャキッとしたネギや、プリッとした歯ごたえのキクラゲ、しっとり系チャーシューもうまい。気づけばあっという間に半分平らげてしまった。

沼袋「ごたる」の「博多ラーメン」

ふと、顔を上げればカウンターに並べられた調味料たちが目に入る。ゴマ、タレ、コショウ、高菜に紅生姜。ためしにいくつかをトッピングしてみることに。

カウンターに並べられた調味料

まずは高菜。個人的にもかなり好きな漬物のため、たっぷりと加える。とたんに乳白色だったスープがするりと色を変え、じんわりと深い黄緑に。

自由にトッピングできる高菜
高菜

高菜を混ぜた沼袋「ごたる」の「博多ラーメン」

高菜を混ぜた沼袋「ごたる」の「博多ラーメン」
麺と絡めて

驚いたのはスープの柔軟性の高さ。高菜を加えたことによりピリッとした辛味とごま油の風味がプラスされ、さらに深みが増す。他にも、紅生姜やごま、ニンニクなどを加えるたびころころと表情が変わる。芯(ベースの味)を持ちながらも、様々な一面を見せてくれるその子(ラーメン)に惹かれるなという方が難しい。

紅生姜を混ぜた沼袋「ごたる」の「博多ラーメン」
紅生姜

ごまが混ぜられた沼袋「ごたる」の「博多ラーメン」
ごま

“博多ラーメン”と言われて舌によみがえるあのこってり感は確かに弱い。しかし濃厚かつ上品で、旨みをストレートに運んできてくれる「ごたる」の「博多ラーメン」には、我々の「うまいラーメンが食べたい!」という欲求をふわりと包んでくれる優しさがある。

店を出て吐き出した息はゆるく白い。まるであの子のまとっていた乳白色のスープを思い起こさせるように。近々、私は再び彼女(博多ラーメン)に会いにくるだろう。そんな気がした。

■ごたる
住所:東京都中野区新井3-38-10