
(画像:グランプリ受賞酒「しずく採り原酒 大吟醸 名刀 月山丸」)
THE JOY OF SAKE は、毎年7~8月に行われる「全米日本酒歓評会(U.S. National Sake Appraisal)」に出品された日本酒が一般に公開される利き酒イベント。2001年にハワイ・ホノルルで初めて開催され、現在はニューヨークと東京でも定期開催されている。すべての歓評会出品酒を試飲できるほか、各開催地で人気のレストランによる特別メニューも提供される。“美酒”と“美食”、両方を楽しめるイベントだ。
歓評会では、日米から招かれた10名の専門家によってブラインド方式で審査が行なわれる。カテゴリーは、大吟醸 A(精米歩合40%以下)、大吟醸 B(精米歩合50%以下)、吟醸、純米の4つに分かれており、それぞれ上位得点の銘柄に賞が授与されるという仕組みだ。今年は159社370銘柄が出品され、金賞95銘柄、銀賞88銘柄が選出された。
7月のホノルル大会、9月のニューヨーク大会を経て開催された、今回の東京大会。東京・五反田の会場に着くと、全出品酒や出店レストランが記載されたパンフレットと割り箸、そしておちょこを渡された。首からぶらさげられるよう、ひも付きの巾着に入っている。筆者はシンプルな柄を選んだが、ピンクやグリーン、イエローなど、カラフルな巾着もたくさん。さっそく首にかけ、フロアへ向かう。

18時、鏡開きとともにイベントはスタートした。21時まで自由に日本酒を飲んで、料理を食べることができる。

会場は2つに分かれており、メインホールには大吟醸 B と吟醸、特別ホールには大吟醸 A と純米、生もとが並んでいる。さらに、出品酒とは別に、蔵元おすすめの日本酒が試飲できる一角もある。


出品酒は、フロアに置かれたテーブルにずらっと並んでいるのだが、それぞれの瓶の前にぐい呑みが置いてあり、スポイトが挿してある。これを使って、少しずつ少しずつ試飲するのだ。とはいえ、全種類を飲むととんでもない量になりそうだが…。
せめて受賞銘柄くらいはおさえておこう。今年は、大吟醸 A 部門「しずく採り原酒 大吟醸 名刀 月山丸」(和田酒造/山形県)、大吟醸 B 部門「さくら大吟醸」(奥の松酒造/福島県)、吟醸部門「出羽桜 桜花吟醸酒 山田錦」「出羽桜 桜花吟醸酒」(出羽桜酒造/山形県)、純米部門「シャトー妙高」(妙高酒造/新潟県)が、グランプリを受賞した。有名蔵が名を連ねているが、いずれも香りや飲み口、味わいのバランスがよく、深い味わいが印象的だった。


さらに歓評会には、米国で醸造された日本酒も出品されている。今年は、ニューヨーク州、オレゴン州、ミネソタ州などの蔵元から出品されていた。実は、海外初の日本酒醸造会社はホノルルに作られたそう。1908年、今から100年以上前のことだ。現在は、米国に醸造所を持つ日本の大手メーカーもあり、“逆輸入”されているものもあるそうだ。

ジョイ・オブ・サケでは、料理も見逃せない。和洋中さまざまなレストラン14店の限定メニューを、おいしい日本酒とともに楽しめるのだ。

最も人気があったのは、話題のステーキレストラン「BLT STEAK TOKYO」(東京・六本木)。またたく間に品切れとなってしまい、筆者も食べ損ねてしまった。人気天ぷら専門店「つな八」(東京・新宿)は、大きな鍋を持ち込み、揚げたてを提供。重慶飯店(横浜市)の「ホタテとピータンムースの中華風ラタトゥイェ」、地酒遊楽裏や(東京・池袋)の「秋燦々」、酉玉(東京・白金高輪)の「ミサキと干し豆腐」など、人気店が作る限定メニューの数々に目移りしてしまう。IL GHIOTTONE(イル・ギオットーネ/東京・丸の内)の「鮭と根菜の酒粕リゾット 柚子風味」には、閉会まで行列が続いた。


ステージでは生演奏でのフラダンスや、ライブパフォーマンスが行なわれたほか、「酔書」や「こけ庭」作りの体験コーナーもあり、盛りだくさん。3時間があっという間に過ぎていった。

日本酒の消費量減少が叫ばれて久しい。一方で輸出量は増加しており、海外では「和食」とともに広まりをみせている。ジョイ・オブ・サケの会場でも、顔を真っ赤にしながら次々とおちょこを空ける外国人を見かけた。
友人とともに参加したというフランス出身のマキシムさん(日本在住1年)は、「スマホで写真をたくさん撮ったので、友達に見せようと思います」と、撮影した写真を見せてくれた。お気に入りの銘柄は「美少年 賢者」(美少年/熊本県)。名前が気に入ったのかと思いきや、「漢字は読めないから何て書いてあるか分からないけど、一番おいしかった」そうだ。
いち日本酒ファンとして、日本酒を好きになってくれる人が増えるのは嬉しい。いつか本場・米国の大会に行ってみたいものである。