アナタにピッタリの日本酒を人工知能がおすすめしてくれる――。“感性を学習する”人工知能「SENSY」を利用したサービス「AI利き酒師」が登場した。伊勢丹新宿本店(東京都新宿区)の和酒売場で、8月29日まで展開される。
このちょっとかわったサービスを実際に体験してきた。筆者はふだんからよく日本酒を飲んでおり、それなりに知見もあると自負しているのだが、“かれ”はどんな酒をすすめてくれるのだろうか。
AI利き酒師の仕組みはこうだ。
まず、3種類の酒を試飲し、「感じたこと」を5段階の数値で端末に入力する。例えば、「甘味」を強く感じたか、「好み」かどうか、といった具合。全部で5項目用意されている。
この結果を受けて「人工知能」が作成される。評価するのは「味覚の鋭さ」。筆者の場合は、酸味と芳醇(コク)に対して鋭い感覚を持っており、甘味にはやや鈍感、という結果だった。

確かに、いつも甘さはさほど気にせず飲んでいる
このうえで、刺身や漬物など8種のなかから、「一緒に味わいたいお食事」を1つ選ぶ。好きなものでもいいし、いま食べたいものでもいいそう。これで終了だ。5分もかからない。
結果、筆者へのおすすめは、長野県の大信州酒造がつくる純米大吟醸。飲ませてもらったところ、口あたりが柔らかくてキレがよく、選んだ食事によく合いそうだった。

AI利き酒師、「こうきたか!」という酒を選んでくれた。最近ハマっている系統の味わいとは違うもの。いつものように「こういう味を探している」とスタッフに相談していたら、決して出てこなかっただろう。純粋に面白い体験だった。
おすすめしてくれる酒は、店頭での売れ筋商品のなかから、できるだけ味わいをばらけさせた30種が用意されている。もちろん購入できるので、さっそく今夜の1本にいかがだろうか。
さて、筆者の場合、はじめに好みを入力するとき、銘柄が表示されていることもあってかなり悩んでしまった。それぞれの銘柄を知っているので、数字の振り分けに迷ってしまったのだ。
一方で、いつもはビールが多くて日本酒はあまり飲まないという人に聞いてみると、「すべて1か5で回答した」という。入力項目が5つあるため、少し難しそうだと思ったが、直感で答えると良さそうだ。撮影に協力してくれたモデルの梨衣名さん(日本酒が大好きな美人さん)も、パッと素早く直感で入力していた。
では、提供する側はどうだろうか。スタッフは、「人の舌は分からないので、新しい接客ができる」と楽しみにしているそう。これ、共感できる人も多いのではないだろうか。
例えば、「辛い酒が好き」という人にいわゆる「辛口」をすすめても、その人が思う味ではなかったりする。「甘い酒」という言葉で想像する味わいも人それぞれ異なっている。そういった、“同じ言葉で違う味を表現してる”ような状態を少なからず解消してくれるのが、AI利き酒師なのかもしれない。
今後も同店には、期間限定でAI利き酒師が登場する予定。よく日本酒を飲む人も、飲まない人も、新しい発見があるのではないだろうか。外国人観光客に、お気に入りの味に出会ってもらうきっかけとしても利用できそうだ。