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君は「ゴリラソース」を知っているか -- ある日、ソースを売っている自販機を見つけた


ある日、東京・大崎駅付近で、ソースを売っている自動販売機を見つけた。飲料に混じってソースが売られているのだ。そのパッケージには「ゴリラソース」の文字。そして、ゴリラのイラストが描いてある。

自販機でソースを売っているという衝撃、インパクトの強い“ゴリラ”の名前。一体ナニモノかと調べてみると、ゴリラソース(そのまんまだ!)という会社にたどり着いた。社名からしてソースメーカーだろうか。この住所が、まさしく件(くだん)の自販機があった場所と一致していた。これは疑いようもなく黒だ。さっそく連絡を取ると、大崎ではなく、オシャレな人々が集う街、自由が丘で会ってもらえることになった。

◆ 人気No.1は「のりの佃煮」…あれ?ソースは?

待ち合わせ場所として指定されたのは「伍利良屋(ごりらや)」という、いかつい名前の店舗。真っ黒な看板に、さん然と輝く店名は金色だ。ソースに描いてあったあのゴリラも鎮座している。ドアの上にあるのは卵のモニュメントだろうか。周辺店舗と並べて見ても異質だし、通りがかりで入るには少々勇気が必要そうだ。

何だかいかつい

ソースメーカーだと思って訪れた筆者は、店内に入って驚いた。ソースのほか、ケチャップ、ドレッシング、タバスコ、のりの佃煮、カステラ、卵かけごはん用のタレ、ひいては、このタレにものすごく合うという卵(商品名は「ごり玉」。手を伸ばしづらい名前だと感じたのは筆者だけだろうか)まで、バラエティ豊かな、いや統一感のない商品が並んでいる。

棚にはずらりと、商品が並ぶ

例えば、ソースやケチャップは600円、卵は6個で500円と、どれもが“ちょっといい値段”。そしてポップには、産地や製造方法などのこだわりが細かく書いてある。一見するとセレクトショップのようだが、“ゴリラ”にちなんだ商品名を持つこれらは、すべて同社がプロデュースしたものだという。

みその商品名は「ごり娘」

ちなみに、リピート率No.1はのりの佃煮「ゴリラですよ」らしい。いやいや、きみ、ドヤ顔してるけど、ゴリラじゃなくてのりの佃煮だから。

ご飯のおとも最強疑惑

ゴリラがトレードマークのゴリラソース、その正体はソースメーカーではなく、おいしいものへの欲望がハンパない人たちが集まる集団だった。

page ソースはご当地の味 ◆ ソースには地域性がある

場所を移して、串カツをつまみながらお話をうかがった。なぜ串カツなのか、については後ほど。

揚げたての串カツ、マズイはずがない

ゴリラソースの看板商品は、社名にもなっているソースだ。ウスターソース、中濃ソースの2種。串カツをつけて食べると、ソースがきちんとカツを引き立てている。ともすれば主役である“かけられている方”の存在を食ってしまうソースが、すばらしい脇役として活躍している――そんな味なのだ。こだわりのトマトを含む原料を新鮮なうちに加工し、コトコトと煮詰めることで、バランスがよく奥行きのある味わいに仕上げてある。開発担当者自身もこのソース(特に中濃)が非常に好きで、冷蔵庫に入っていないと落ち着かないのだそうだ。

ソースというのは実は、寡占状態のメーカーがない珍しい業界だという。そういえば、兵庫県で生まれ育った筆者は、東京へ来るまでブルドックソースなど知らなかった。先日「ご当地ソース人気ランキング」をえん食べでご紹介した際には、編集部内で「オタフクだ」「イカリだ」「ブルドッグだ」と紛糾したものだ。筆者の「オリバーソース(兵庫県に本社を置くメーカー)」という主張は見事にはねのけられた。それだけ、地域や育った環境によって、親しんできたソースが異なるのだ。(ちなみに、筆者の実家では種類によって愛用ブランドが異なっていた。ウスターソースはイカリ、お好み焼きソースはオタフク。そしてとんかつにはオリバー。用途を限らずに好きなソースを聞かれると、正直、困る。)

話が脱線してしまった。そんな“ご当地色”豊かなソースの世界で、「自由が丘生まれのソース」を目指すべくスタート。そして3年ほど前、「愛情深い生き物で、かつキャッチーだ」という理由からゴリラをトレードマークとし、ゴリラソースが誕生することとなったそうだ。

◆ レストランもある

ソースから始まったゴリラソースだが、現在はさまざまな商品を展開している。それらを一挙に体験できる場所として活躍しているのが、2月、伍利良屋のすぐ近くにオープンした直営飲食店「ごりら横丁」。すし、焼肉、しゃぶしゃぶ、串カツと4つの形態の店舗(駄菓子屋をあわせると5つ)が“横丁”のように1フロアに集められている。ここで筆者は串カツを頬張ることとなったのだ。

この横丁では、別形態の店で購入したメニューを持ち込み、一緒に食べられる。串カツをつまみに焼肉を食べ、シメにすしを…なんてことも可能だ(ちょっと無茶苦茶だが)。それぞれの店舗に、ソースだったりしょうゆだったり酒だったり、ゴリラマークの商品が置いてあり、その味を試せる。

さらに、ごりら横丁の下にあるハンバーガーレストラン(女性グループに大人気)も同社が運営している。ここで食べたケチャップの味を忘れられずに再訪する人や、「どこで買えるのか」と尋ねる人も多いという。言わずもがな、ゴリラマークのあのケチャップのことだ。

両レストランで気に入ったものがあれば、店内に置いてあるので購入できる。伍利良屋へ行ってもいい。高めのものが多いが、いくつもの商品にリピーターがついているという。
page なぜ自販機でソースを売るのか
◆ なぜ自販機でソースを売るのか

そろそろ、今回の取材のきっかけとなった“自販機でソースが販売されている件”について聞いてみよう。

ズバリ、なぜ“自販機でソース”にいきついたのだろうか。その答えは、「あくまでお客様との接点のひとつとして考えています」とのことだった。思っていた以上にマジメな回答だ。同社は、自店舗での販売以外に大きな販売経路を持っていない(たまに百貨店などへ催事出展しているくらい)。そんななかでお客が購入できる機会を増やそうと、自販機での販売を思いついたそうだ。もちろん、そのユニークさも理由のひとつ。伍利良屋の前にも自販機が設置されているのだが、やはり面白いからか、店内で商品を見たあと「じゃあ自販機で買います」と出て行くお客もいるらしい。

伍利良屋前にある自販機(扉をあけた状態で撮影)

「100年後の老舗を目指す」というゴリラソース。今後は、商品の本格的な展開をすすめていく予定だという。そのうち、スーパーではブルドッグの横にゴリラが並んでいるのだろうか。いや、あちこちの自販機にゴリラマークのソースが入っている可能性もある。100年後の自由が丘には、心優しいゴリラのマークがあふれているかもしれない。
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