麺屋武蔵「筍ら~麺」
第4弾は蒲田店(東京都大田区)の「筍ら~麺」。そう、“タケノコラーメン”です。第1弾「大トロ」、第2弾「フグの白子×獺祭酒かす」、第3弾「タイ×コショウ」と比べると、なんとも地味だと思いませんか? だって、タケノコだし。タケノコしかのっていないし。でも、食べると、身震いするほどの衝撃を受けました。こんなタケノコ、知らない――。
ゆでタケノコの衝撃
丼の上でどどんと存在感を放つ大きな大きなタケノコ。正直、ものすごく食べにくい。ギザギザ(?)のすきまに箸を無理矢理入れて、えいやと持ち上げます。で、かぶりつくのがまた大変なのですが、ほおばったとたんに体じゅうを衝撃がかけぬけました。
なんだこれは! タケノコってこんな食感だっけ? こんな味だっけ!? しゃくっと音がなったあと、ジュワ~っと溶けていくような、ジューシーな食感。エグさのまったくない自然な甘さ。なんと表現すればいいものか…とにかく、こんなタケノコ食べたことないぞ!
タケノコスープの衝撃
スープにもまたビックリ。透明だけど、実は目に見えないほど細かいタケノコを混ぜてあるのかってくらい、タケノコの存在を感じるのです。かといってエグみは全くなく、高級割烹のだしかと思うほど(食べたことはないけど)、奥深さがあります。どうやったらこんなにタケノコが染みたスープになるんだ…!
麺は、喜多方ラーメンのようなちぢれ麺です。でも食感はいつもと全く違う! 驚くほどもっちもちで、弾力はありつつも、すっと噛み切れる柔らかな口あたり。スープをほどよくからめて、口の中に広げてくれます。
タケノコご飯の衝撃
このメニューは、タケノコがゴロゴロ入った「筍ご飯」もセットとなっています。そのまま食べてもいいし、スープに入れておじや風にしても絶品です。ご飯にしっかりとタケノコの風味がうつっていて、すっとスープとなじみます。このおじやに筍ら~麺のすべてが凝縮されているといっても過言ではないかもしれません。
現地で調理すればいい
タケノコそのものも、スープも、そしてタケノコご飯も、どれもが、めくるめくタケノコワールドへといざなってくれました。その一因を担っているのはもちろん、タケノコです。このタケノコは、玉露の産地として有名な、静岡県藤枝市岡部町の朝比奈地区産。「玉露ら~麺」をつくったとき、ここのタケノコと出会ったそうです。実は朝比奈地区は、山向こうから買いに来る人もいるほど、地元では有名なタケノコ産地なのだとか。
蒲田店の店長さんは、実際に朝比奈で収穫を体験し、その場で、さまざまなタケノコ料理を農家さんに作ってもらったそうです。そのなかでもっとも感銘を受けたのが、ただ生のタケノコを入れただけなの「みそ汁」でした。 「新鮮なタケノコからはいいだしがとれる」と、“タケノコだし”が生まれるきっかけとなりました。
生のタケノコを食べられるのは、収穫直後だけ。ちょっと時間が経っただけでエグみが出てしまうため、多くの場合は水煮にして販売されます。しかしこれだと、茹で汁にうまみが逃げてしまいます。
東京へ持って帰るわずか2時間でもエグみが出てしまい、朝比奈で食べた味を再現できなかったそうです。そこで思いついたのが現地調理でした。竹林の中に大きな釜を設置。採ったもののなかから選別したタケノコを、昆布やカツオでとった“一番だし”で10分ほど炊いているといいます。

炊いたタケノコの根元が、あの大きな大きなタケノコ。新鮮な状態で調理したからこその食感を味わってほしいと、わざと大きくカットしているそうです。
穂先は、米と一緒にだしで炊き込んでタケノコご飯に。ほんのちょっと加えてあるしょうゆがポイントです。
そして、鍋に残っただしが、スープのベースとなっています。本当に掘ってすぐのタケノコを炊いているからこそ、あれだけエグみのない“タケノコだし”の風味が出るのでしょう。
ちなみに、トッピングしてある木の芽も、竹林の近くで採ったものだそうです。こちらも、市販のものとは一線を画した濃厚な香りが楽しめます。
鮮度命のタケノコを味わいつくす
提供期間は、4月14日から4月17日まで、1日10食限定。価格は2,000円です。鮮度命のタケノコをとことん味わいつくせる1杯、きっと、その奥深さに驚くはず。住所:東京都大田区西蒲田8-1-15