ホーム   »   イベント   »   日本酒   »   いま日本酒がアツイ--男女で楽しみ方に違いはある?

いま日本酒がアツイ--男女で楽しみ方に違いはある?

「日本酒はオジサンが飲むもの」。そんなイメージが強かったのはいつの頃までか。近年、日本酒を積極的に楽しむ人が増加している。実際に試飲会や日本酒イベントをのぞいてみると、女性(しかも若い!)がたくさんいるのだ。

自他ともに認める日本酒好きの筆者、春に開催された2つのイベントに潜入し、勢いよくおちょこを空にしていく女性たちのパワーに触れてきた。

人気日本酒イベントに潜入

◆“味”を楽しむ女性たち

5月に東京・銀座で開催された「郷酒フェスタ for WOMEN」。第1部は女性のみ、第2部は“女性と同伴男性”しか入場できないという、トンデモなイベント。おそらく、初の女性限定大規模日本酒イベントだろう。だが、計1,000枚用意されたチケットは3週間で完売し、最終的には600人のキャンセル待ちが出たそうだ。

第1部の開場と同時に入ってきたのはもちろん女性ばかり。全30蔵が出展したブースには、瞬く間に行列ができた。会場内はさながら“女子会”の様相を呈している。

たまにいる男性は、みな関係者

さて、彼女たちはどのように日本酒を楽しんでいるのだろうか。眺めていると、並んでいるお酒を端から順に飲んでいく人が多い。そしてスタッフに尋ねているのは、製法よりも“味の違い”。あわせて、どういった料理とあわせるとよいか、という話題でも盛り上がっていた。スタッフが話したことをもとに、女性たちの口からは次々とアレンジ方法やアイデアが飛び出す。

ある酒蔵のスタッフは、「うちの蔵の酒は食中酒(食事とともに楽しむ酒)としてすすめています。おすすめの銘柄などを聞かれたら、手に持っているおつまみ、いま食べたいものなどから、合うものをお出ししています」と話してくれた。「大吟醸が飲みたい」とか「辛口が好き」とかそういった選び方もいいが、知識が全くなくても楽しめるということを、出展側と参加者、双方が示してくれたように感じた。

イベント終盤になると、気に入った銘柄を集中的に飲んでいる人たちが増える。「全部飲んだけどこれが一番おいしかった。もう4回目!」と話した麗しい2人組は、颯爽と次の“お気に入り”へと向かって歩いていった。その後ろ姿の、なんとたくましいことか。

それにしても、皆よく飲む


page オシャレなボトルが女性の心をキャッチ
◆飲み比べが楽しい!

3月に渋谷で開催された「ぴあ日本酒フェスティバル2015 酒春祭」にも、たくさんの女性が訪れていた。20代と思しき若い人を多くみかけたのが印象的。こちらも全国から30の蔵元が出展し、さっそく各蔵に行列ができた。

人気が上昇している蔵のひとつ、富美菊酒造

このイベントには、“変り種”の日本酒も出品された。

積善(長野県)のブースには、「花酵母」を使った日本酒が並んでいた。花酵母はその名のとおり、花から分離した酵母。この日は、ヒマワリ、ベゴニア、つるばらの花酵母を使ったものが出品されていた。なかでもヒマワリの花酵母を使った「積善 純米吟醸 愛山 生原酒」を試飲。口に含むとほのかにハチミツのような甘みを感じた。後味はすっきりしていて飲みやすい。女性のリピート率が高かったように思う。

本老の松(長野県)のブースで女性の関心を集めていたのは、カラフルでおしゃれなビンに入ったお酒。「フランボ和ーズ」「カシ酒グリ」「黒貴妃」と名づけられたそれらは、清酒ベースのリキュールだ。そういえば、銀座のイベントでも物販の「すだち酒」が早々に完売するなど、果実酒系は非常に注目度が高かったようだ。日本酒を飲みなれていない人にも親しみやすいのだろう。

オシャレなボトル、手書きのポップが女性をひきつける

「日本酒のイベントは初めて」だという22歳の女性に印象的だった銘柄を尋ねると、「千代むすび」(鳥取県)と返ってきた。「40、50、60を飲み比べさせてくれて、それぞれに全然味が違っていてビックリした」そうだ。数字は、酒米の精米歩合(磨き具合/%)のこと。数字が小さいほどよく削られていることになり、40は大吟醸、50は吟醸にあたる。…とまあ、こんな知識をただ並べるだけでなく、実際に味を比較しながら話を聞けたことが楽しかったようだ。

ほかの来場者にも話を聞いたが、彼女のように日本酒のイベントは初めてだという人が多かった。かといって、普段から日本酒を好んで飲むわけでもない。巷で人気のフードフェスのような感覚で来てみたのだろうか。そして実際に飲んでみて、違いを感じて、「日本酒っておいしい」「こんな味のものもあるんだ」と気付く。正直なところ、酒屋や飲食店でイベントで飲んだ銘柄と“再会”する機会は少ないのだが、日本酒の魅力が少しでも広まっていけばいいと、いち日本酒ファンとして思う。

page 男女で好みの違いはあるのか
各蔵の「仕込み水」が並ぶのも、イベントの楽しみのひとつ

一般的に、女性が好む日本酒、女性向けの日本酒として、甘めで飲みやすく、オシャレなボトルのものがよくあげられる。最近人気が上昇しているスパークリング清酒も、女性の間で人気。ほんのり甘いにごり酒も評判がよいといわれている。確かに、スパークリングやにごりの人気は高いし、果実酒への食いつきもいい。だが、初めはこれらばかりを飲んでいたものの、いろいろと飲み比べるうちに、いわゆる“男性好みの酒”にハマるようになったという声も。30代の女性は「いまは辛口のお酒が好きです」と酒をぐいと飲み干した。また郷酒フェスタの出展者によると、女性向けに持って来た銘柄が案外ふるわず、男性ウケがよいと考えていた銘柄の方が人気だった、という。「驚きました」と担当者は笑う。

凡庸な表現になってしまうが、結局のところ、好みは人それぞれ。ただ、“飲みやすい”酒が日本酒の敷居を下げ、活況を呈するイベントが日本酒に接する機会を増やしている、ということはいえるのではないだろうか。日本酒を“楽しむ”土壌は整いつつあるのかもしれない。

今回取材で訪れた2つのイベントは、どちらも秋の開催が決定している。秋のごちそう「ひやおろし」や「秋上がり(あきあがり)」が目玉となるようだ。ほかにも多数のイベントが予定されている。日本酒の飲み比べができる飲み放題の店も人気だ。何よりもお酒は楽しく飲むのが一番。日本酒と一緒に「和らぎ水」(要するにチェイサー)をしっかりと飲んで、くれぐれも飲みすぎないように注意されたい。自戒を込めて。
おすすめの関連記事
関連キーワード / ジャンル
/
日本酒
関連記事
Google ニュースで「えん食べ」をフォローできます。スマホ、タブレットなどで便利に読めます。 是非フォローをお願いします!