まじめなイタリアンレストランの愚直な料理を、ぜひ
まじめなイタリアンレストランの愚直な料理を、ぜひ

東京都内だけで、5,733軒。――これ、なんの数字だと思われますか?正解は、食べログに掲載されている東京都内のイタリア料理店の数(記事執筆時点)!つまり単純計算しても、一つの市区町村に90軒以上ものお店が存在していることになるんですよね。イタリアン恐るべし。

そんな数あるイタリア料理店の中で、筆者の人生史上3本の指に入ると思っているお店が世田谷区・三軒茶屋にある「ペペロッソ」。ほかではなかなか見かけない、珍しいイタリアの郷土料理=本場のママン(おふくろ)の味に出会える場所です。まじめで愚直なアティテュードも大好き。

◆イタリアンの名店からシェフが独立

ペペロッソは1986年に創業した老舗イタリアン。三軒茶屋駅から歩いて3分ほどのところにあります。昨年(2015年)7月にリニューアルオープンし、スタッフ、メニュー、内装までがらりと一新されました。

三茶駅から歩いて3分のペペロッソ
三茶駅から歩いて3分のペペロッソ

ちなみに現在は、食べログ「東京ベストレストラン」ランキングでイタリアン部門1位になったこともある人気店「インカント」(東京・広尾)から独立したシェフが料理長を務めています。

インカントは高級店のイメージがあるのに対し、ペペロッソは肩ひじ張らずに楽しめるカジュアルレストラン。でも、味は一流なのです。国産の素材(一部イタリア産)や手づくりにこだわる質の高い料理以外にも、厳選されたイタリアンワインがずらりとラインナップ。

ワインは倉庫に保管してあるものも含めると500種以上あるそうなので、もし飲みたいワインがあるなら予約時に電話で伝えておくと、来店当日までに用意しておいてくれるそうです。

“個性派”ワインもたくさんあるとか
“個性派”ワインもたくさんあるとか

◆メニューが読めない

メニューブックを開くと、脳が一瞬フリーズするかもしれません。なぜならイタリアンといえばおなじみの「カルボナーラ」や「ペペロンチーノ」といった文字はそこにはなく、料理名はすべてイタリア語。まず読めないんですよね。

料理名が読めない
料理名が読めない

でも大丈夫!気さくなスタッフさんに聞けば、ていねいに教えてくれます。そのときついでに料理と合うお酒も聞いてみるのが吉。というのも、ペペロッソの料理はすべてワインなどのお酒と一緒に味わってはじめて100点満点の完成形になるんですって(料理長談)。自分のお気に入りの組み合わせを見つけるのも楽しそう!

◆絶対に食べるべき“シナモンバターのパスタ”

看板メニューは「手打ちパスタ」。常時15種類以上が用意されています。日本ではめったに見かけないパスタもあり、すべて手づくり。

中でも、絶対に食べるべきメニューが「チャルソンス」(1,380円)という、イタリア北部で食べられているパスタです。筆者はここで初めて食べて、そのおいしさの虜になりました。

珍しいシナモンバターのパスタ  本場イタリアでは、お皿にお花を飾るのが最近のトレンドだそう
珍しいシナモンバターのパスタ
本場イタリアでは、お皿にお花を飾るのが最近のトレンドだそう

ペースト状にしたじゃがいもにほんのりシナモンやカカオを効かせ、小麦粉の生地で包んだパスタ。シナモンで香りづけした、焦がしバターのソースを合わせて仕上げてあります。砕いたくるみ、ドライアップル、燻製したリコッタチーズ、ミントの葉がトッピング。

ギョウザみたいなユニークなパスタ
ギョウザみたいなユニークなパスタ

中にみっちり詰まったじゃがいも
中にみっちり詰まったじゃがいも

ぷくっと豊満なパスタを口に入れると、スパイスとバターの香りがふわぁっ。もちもちの生地を噛むと、甘くてねっとり濃厚なじゃがいもが舌に絡みます。パスタの表面には砂糖がまぶされていて、上品なシャリシャリ感もアクセントに。全体的に“あまじょっぱい”味の仕上がりが、本場イタリア風なんですって。いろんな味がするけれどちゃんとまとまっていて、斬新だけどどこか懐かしくて…とにかくおいしいんです。

茹でる前のパスタ。クルクル成形するのが難しいんですって!
茹でる前のパスタ。クルクル成形するのが難しいんですって!

◆知ってた?イタリア人もウニが好き

イタリア人も日本人と同じくらい「ウニ」をよく食べるってご存知でしたか?というわけで、濃厚なウニのソースを合わせたクリームパスタ「オレキエッテ」(1,480円)もオススメ。イタリア南部を代表する郷土料理です。

色とりどりの野菜とともに
色とりどりの野菜とともに

オレキエッテは、珍しい“焦がし小麦”を使ったパスタ。その名のとおり焦がした小麦を挽いて作っているので黒っぽく、耳たぶのような形をしています。小麦が粗めに挽かれているため、食感は普通のパスタよりもやや硬め。

茹でる前のパスタ
茹でる前のパスタ

ソースは、燻製したウニを少し食感が残るくらいにつぶし、オリーブオイルを加えて仕上げてあります。生クリームなどは使っていない、純度の高いウニソース!これをパスタに絡め、赤・黄・緑色のプチトマトとバジル、細かく砕いたローストアーモンドをトッピングしてあります。

幸せをほお張る瞬間
幸せをほお張る瞬間

トロットロのウニソースをまとったパスタを口へ運ぶと、濃厚なうまみと磯の香りが波のようにどっと押し寄せます!むちむちのパスタは噛むほどに香ばしく、焦がした苦みがほんのりと。パスタだけでなく、燻製ウニやローストアーモンド、それぞれの「香ばしさ」が共鳴しています。爽やかなバジルとジューシーなトマトで後味もすっきり。

余談ですが、パスタの凹みの部分にウニソースを満たして食べると気絶するほどおいしいのでぜひお試しください。

◆季節を味わうアンティパスト&本格ドルチェ

「旬」を大切にするアンティパスト(前菜)や本格ドルチェも同店のこだわり。ワインのおともにいかがでしょうか。

たとえば「季節野菜のサラダ」(1,580円)は今の時期だと、イタリア産馬の生ハムに2種のチーズ(パルミジャーノ・レッジャーノと、羊乳と白カビのチーズ)、マッシュルーム(とかちマッシュ)、イチゴ、ブルーベリー、ザクロなどを合わせたもの。

ハムとフルーツを一緒に食べるのがイタリア流
ハムとフルーツを一緒に食べるのがイタリア流

馬の生ハムって日本ではあまり食べる機会がないと思うんですが、臭みもなくあっさりしていて、淡泊なうまみのあるとても食べやすい生ハムです。また、羊のチーズはまろやかなコクとマッシュルームのような香りが特徴。

フルーツが肉の脂をさっぱり流してくれる
フルーツが肉の脂をさっぱり流してくれる

また、筆者お気に入りのドルチェは、甘くてほんのりスパイシーな「ペペロッソ風パンナコッタ」(600円)。ふるふるとろとろのパンナコッタに、シナモンやクローブなどのスパイスで香りづけしたキャラメルソースを合わせてあります。

容器のカップが可愛い!
容器のカップが可愛い!

スプーンの上でギリギリ形をとどめる、ふるふるやわやわのパンナコッタ。口に入れると一瞬で溶け、甘く麗(うるわ)しいバニラの香りが広がります。これにキャラメルソースがもったりと絡み、香ばしさとスパイスの複雑な味わいが加わるのです。

大人のためのパンナコッタ
大人のためのパンナコッタ

あと、そうそう、忘れちゃいけないのが天然酵母のパン。パスタを作るのに使われる「セモリナ粉」の酵母を使っているという、なんとも珍しい自家製パンです。

料理を注文すれば必ず付いてきます
料理を注文すれば必ず付いてきます

白いパンは普通の小麦粉、黒っぽいパンは先ほども登場した焦がし小麦を使ったものです。前者がしっとり吸い付くような質感なのに対し、後者はふんわりと弾力があります。後者はより噛みごたえがあり、咀嚼(そしゃく)するほどにうまみがジワリ。どちらもまるで果実をかじっているかのようなフルーティーさで、バターやオイルはつけずにそのままおいしい!

提供されるのは焼きたてではなく、あえて一日寝かせてから。なぜなら、寝かせることで香りも味もアップするからだとか。ただし希望すれば焼きたても出してくれるそうです(ディナータイムのみ)。

◆「歴史を食べる」レストラン

ペペロッソのコンセプトは「歴史を食べる」。メニューブックには料理の写真がない代わりに、それぞれの料理の起源や由来が書かれてあります(これは日本語)。

たとえば焦がし小麦のパスタは、焼畑農法で小麦を育てていた農民たちが、畑に焦げ残った小麦も拾って食べていたという“もったいない文化”から広まった料理なのだとか。ここではこんなふうに、イタリアの歴史や文化に触れながら郷土料理を味わう「体験」そのものが提供されているんですね。

ちなみに同店は「イタリアンレストラン品質認証マーク」なるものを取得しているそうで、つまり「イタリア伝統のレシピを守り、イタリアの文化とホスピタリティーを伝える努力をしている」と認められたお店なんだとか。

店内にもそこかしこにイタリアらしさが散りばめられてる
店内にもそこかしこにイタリアらしさが散りばめられてる

歴史だとか文化だとか、ちょっと偉そうなことを書いてしまいましたが…私自身もはじめは「ただおいしいものが食べたい!」というモチベーションだけで足を運んだ身です。イタリアに詳しくなくてももちろん問題なし。ぜひ気軽に立ち寄ってみてくださいね。

店舗所在地は、東京都世田谷区太子堂1-12-23 第一ゴールドビル1F。営業時間はランチ11時30分~15時、ディナー17時30分~24時。日曜定休です。