紅茶屋さんがイベント用につくったスリランカカレー

暑い夏。カレーの話題があふれる季節がやって来ました。

2016年夏、“絶対に流行る”といわれているカレーが「スリランカカレー」です。大阪を中心に人気が上昇し、その熱は各地へ波及。今年に入ってから、都内にも相次いで専門店がオープンしているといいます。


といっても、ピンと来ない人のほうが多いでしょう。スリランカカレーって一体何者?

●スリランカってどんな国?

スリランカカレーは、名前のとおり、同国で食べられているカレーのことです。

スリランカ(正式名称:スリランカ民主社会主義共和国)は、インドの南東に位置する島国です。面積はおよそ北海道の0.8倍。かつての国名を冠した「セイロンティー」をはじめとする紅茶の生産が盛んで、近年は、絶景やアーユルヴェーダを目的に訪れる日本人観光客も多いそうです。

主食はカレー。というか、3食すべてカレー。でも、日本でおなじみのカレーライスやインドカレーとは、ちょっと違っています。

●スリランカカレーの“定義”

スリランカ紅茶専門店「紅茶屋さん」店長・加地さんに、スリランカカレーを作ってもらいました。ご飯のまわりに何種類かのおかずが並べてあり、それぞれの味を楽しんだあと、好きなように混ぜて食べます。 このように、“ワンプレート”に盛るのも特徴のひとつ。

カレーの日イベントのスリランカカレー
加地さん作のスリランカカレー。ずいぶんカラフルです

日本カレー研究所の井上岳久代表は、スリランカで“現地調査”を行なって110種(!)のカレーを食べた結果から、スリランカカレーには次のような特徴があるといいます。

具材は主に豆と野菜:特に豆は毎食必ず登場するほど多用されます。魚や肉も使いますが、流通量が少ないため、特別なときだけだったり。特に牛肉は“ごちそう”なのだそうです。

ココナッツを丸ごと活用:そこらじゅうでココナッツが売られているスリランカ、ココナッツオイルはもちろん、ココナッツミルクや果肉なども、丸ごとカレーに使います。果肉を辛く味付けした「サンボール」は、付け合わせの定番。福神漬けのような存在です。

カレー粉を使う:スパイス単体で使うインドに対し、スリランカでは、市販品や自分でブレンドしたカレー粉を食材によって使い分けます。ローストして風味を変える場合も。巧みなカレー粉づかいによって、ワンプレートで鮮やかに映える、何種類ものカレーができるのです。

独自のスパイスとだし:「カレーリーフ」やスリランカならではの「ゴカラ」、ハーブ「テンペ」、そして「シナモン」をよく使うそう。そして、かつお節みたいな「モルディブフィッシュ」でとった“だし”を使うこともあるとのこと。

スパイスなど、カレーの材料

ちなみに、現地のカレーは、ものすごく辛いそうです。それこそ、井上氏でもギブアップしそうになるほど。さすがにスリランカの人も自覚しているようで、マイルドな“外国人向け”を用意している店もあるそうです。

●どうして日本で人気?

そんなスリランカカレーが、日本で受け入れられているのはなぜでしょう。井上氏は、大きく3つの理由をあげています。

1.日本の文化に合う

いわゆる“インドカレー”では鶏肉と羊肉が中心。一方、仏教徒が大半を占めるスリランカでは、宗教による食材の制約がほとんどなく、日本のカレーでおなじみの豚肉や牛肉も使えます(とはいえ、先述のとおり、ごく一部に限られますが)。自分でつくるときにも取り入れやすいですよね。

そして、島国のスリランカらしく、魚もカレーの具として使います。加えて“だし”や“コメ”という日本の文化との共通点。似ているところがたくさんあるのです。

2.“ワンプレート”で華やか

従来カレーといえば、“白+茶色”で華がなく、男性ファンが中心でした。でも、野菜も一皿に盛り付けるスリランカカレーは、フォトジェニックな華やかさ。女性に受け入れられたこともブームに拍車をかけたようです。

3.栄養バランスが良い

肉も魚も入るし、副菜としての野菜もたっぷり。特に野菜が“見える”ことによって、バランスのよい食事として認識されやすくなるのでは、と井上氏は話します。

●スリランカ“風”で家庭にも

ただ、いくら日本の食文化と合うとはいえ、スパイスやココナッツをたっぷり使った“本場の味”を再現するのは難しいもの。そこで、広く取り入れられつつあるのが“スリランカカレースタイル”のカレーです。

例えば、ハウス食品が提案するレシピでは、チキンカレーと副菜4種をご飯のうえにのせるだけ。このように“ワンプレート”に盛り合わせる楽しみ方が、家庭にもじわじわ浸透しているのだとか。

カレーの日イベント、ハウス「ジャワカレー」を使った「スリランカ風チキンカレー」
ハウス流「スリランカ風チキンカレー」

ワンプレートという手軽さ、混ぜて食べる“変化”の楽しさ、フォトジェニックな盛り付け、そして日本の文化にあわせたアレンジの自由さ。「スリランカカレー」は、2016年の夏を彩るアイテムになることうけあいです。