
東京・目黒にある蕎麦の名店「川せみ」。場所はちょっぴり奥まったところだけど、いつも人でいっぱい。細い蕎麦と太い粗挽き田舎蕎麦の食べ比べができる「二色せいろ」がおいしい。
目黒川のほとりのお店
川せみは目黒駅西口から「行人坂」をくだって「雅叙園」を通り抜け、川を渡って少し行ったところにある。周囲は飲食店がいくつもあり、住宅街のまんなかにランチスポットができているのが面白い。
落ち着いた店構えだが、昼時になると人が列をなしてにぎやかに。しばらく待って入り、カウンターに座る。蕎麦が2種類1度に食べられるという「二色せいろ」(1,250円、税込)を注文してみる。ランチはお米のご飯もついてくるそう。
サプライズな“炊き込みご飯”
冷たいお茶を飲んで待っていると、まずご飯を盛って出してくれる。でも、おかずなしは困るな、と思いきや炊き込みご飯らしき味つけ。単品でぱくぱく食べられる。ほんのりお醤油(しょうゆ)の味がやさしくなつかしい味だ。
蕎麦のお店に来てまずご飯にほっこりすることになるとは。
細い蕎麦と太い蕎麦
次に「せいろ」として細い蕎麦が来る。色が白く舌ざわりはなめらか。蕎麦つゆによくからみ、しかもクセがないので香り高いツユをしっかりと感じられる。シャキシャキした薬味のネギや、ピリっとしたワサビにもよく合い、いかにも江戸のころから続くしゃれた食べものを楽しんでいるな、という気持ちになる。
続いて「粗挽き田舎蕎麦」が出る。こちらは蕎麦が太く、黒い蕎麦の実のかけらが入っていて荒々しい。たぐってみると、とにかくコシがある。歯ごたえを楽しむならこちらだ。蕎麦の風味も心持強いようだ。
どちらかといえば、太い粗挽き田舎蕎麦の方が好みに思ったが、細い蕎麦と食べ比べるからこそコントラストがはっきりして、より楽しめる気もする。
どちらがよいか、もう一度よく吟味しようと、交互にツユにつけて味わっているうちにあっという間になくなってしまう。最初に出てきたご飯と合わせてもやや物足りない。大盛にすればよかったかと悩んでいると、蕎麦湯がやってきた。
蕎麦湯でお腹もくちく
蕎麦湯は、田舎蕎麦よりもさらに強い蕎麦の香りがする。これで蕎麦つゆを割って飲むと、ツユのうまみがあらためて分かる。はじめは濃いツユの味を満喫し、ちょっとずつ割くにつれ、だんだん薄くやわらかい蕎麦湯の味を楽しむ。すべて飲み終わるころにはお腹はくちくなっていた。
ほっと大きく息をついてから、席を立つ。1回の昼ご飯で、蕎麦という料理が持つ色々な顔を次々に見た思いだった。
住所:東京都目黒区下目黒2丁目17−23