日本でキオスクといえば「駅の売店」のイメージ。でも本来は庭園にある日陰をつくるものという意味です。世界には、雑誌や軽食の販売のほか、休憩所や観光客の案内所として使われるキオスクもあります。

そんな渋谷神山町の“町のキオスク”のような存在が「CAMELBACK sandwich&espresso」。道行く人から調理カウンターが見えるこのお店では、近所のお馴染みさんたちがふらりと立ち寄り、気軽にコーヒーやサンドウィッチを注文する光景が見られます。でもこのお店で出されるサンドウィッチとコーヒーは、びっくりするくらいおいしいもの。「CAMELBACK sandwich&espresso」のおいしさの秘密はどこにあるのでしょうか?そして、このお店が、神山町のキオスクになった理由は何でしょう?その理由を紹介します。

■神山町ってどんなところ?
「CAMELBACK sandwich&espresso」があるのは、最近は奥渋谷などとも言われる渋谷神山町。109やヒカリエなどがあってにぎやかな渋谷駅周辺とは異なり、ちょっとリュクスな雰囲気が漂っています。町には、高級車に乗ったダンディなおじさまや、洗練されたファッションに身を包んだ外国人の姿も。ラクダのマークと一面ガラス張りのドアが目印のお店では、サンドウィッチを作る成瀬さんと、コーヒーを作る鈴木さんが気さくな笑顔で迎えてくれます。

ラクダのマークと一面ガラス張りのドアが目印
ラクダのマークと一面ガラス張りのドアが目印

■成瀬さんのサンドウィッチってどんなもの?
◆すしやの玉子サンドって何だ!?
サンドウィッチといえば、パンに野菜やベーコン・ハムが挟まったものを想像しますよね。でもこの店の売りのひとつは、寿司屋のネタである玉子を、玉子サンド専用のモチモチとしたパンで挟んだ「すしやの玉子サンド」。元寿司職人という経歴をもつ成瀬さんだからこそ作れるサンドウィッチです。パンのモチっとした食感とほのかな甘み、職人にしか出せない味わいの玉子焼き、下部分のパンに塗られたからしが一体となって、口の中を幸せで満たしてくれます。コンビニなどで見かける、細かくしたゆで卵をマヨネーズで和えて食パンに挟んだたまごサンドとは一線を画し、パンと玉子のうまみを存分に味わえます。

この玉子サンドお寿司屋さんでも出してほしい!
この玉子サンドお寿司屋さんでも出してほしい!

◆どうやってつくっているの?
まずは大人の片手に乗る可愛いサイズのコッペパンを半分にカット。下半分には、バターと味を引き締めてくれるからしを塗っていきます。

バターと味を引き締めてくれるからしを塗って
バターと味を引き締めてくれるからしを塗って

火入れだけで1時間という、手間がかかった玉子焼きはまさに職人の技。その一切焦げ目がないきれいな玉子焼きをパンで挟んで完成です。

玉子焼きをパンで挟めば完成
玉子焼きをパンで挟めば完成

◆玉子サンドのこだわりは?
サンドウィッチを作っている成瀬さんに、「玉子サンド」へのこだわりをインタビューをしました。なぜ寿司屋のネタをサンドイッチにしようと思ったのでしょうか。

成瀬さん:「玉子はここ東京で70年続く玉子商の新宿『玉新』から、何種類もの玉子を取り寄せ比較し、最も合うと思ったものを使っています。また、寿司屋で出す玉子は食事の終盤に食べるので甘みが強いですが、サンドの玉子はそれよりも甘みを少し控えめにしています」

芸術品のような玉子焼き
芸術品のような玉子焼き

えん食べ:サンドウィッチを作るうえでの1番のこだわりは何ですか。

成瀬さん:「とにかくパン本来のおいしさを引き出すこと。寿司はシャリをたべる料理で、サンドウィッチはパンをたべる料理です。いろいろな店を食べ比べて最高のバゲットを使っています。パンのうまみを感じてもらえるように、具材のバランスにも気を遣っています」

こだわりのサンドウィッチのために選び抜かれたパンたち
こだわりのサンドウィッチのために選び抜かれたパンたち

えん食べ:自身のサンドウィッチを一言で表現してください。

成瀬さん:「寿司。寿司もサンドウィッチも、主食にひと手間かけて一つの料理にするという点で似ているし、良い素材じゃないとおいしいものは作れません」

◆おいしさの秘密は良い素材とこだわり、そして優しさ
成瀬さんは、パンのうまみをしっかり感じられるかということを意識してサンドウィッチを作っています。良い食材を最適なバランスで使うところもおいしさの秘密のようです。玉子サンド誕生の背景には、固めのバゲットサンドが食べにくいお年寄りや、子どもでもおいしいサンドウィッチが食べられるようにという想いもあるのだとか。

優しさが隠し味
優しさが隠し味

◆もちろん普通のバゲットサンドも
おいしい玉子サンドでさらに食欲を掻き立てられたので、続けて「パルマ産生ハムと大葉、ゆずとバターの香り」を注文。バゲットや生ハムといった洋の食材と、大葉やゆずといった和の食材の融合が楽しめる一品です。仕上げとして茶筅でふりかけられたゆずは、見た目も美しく、口に入れた瞬間、爽やかな香りを鼻に運んでくれます。さらに、大葉の独特な味わいと生ハムの塩気が、バゲットの素朴ながらもしっかりとした味わいを引き立てています。

パンのうまみも味わえる和洋折衷のサンドウィッチ
パンのうまみも味わえる和洋折衷のサンドウィッチ

■エスプレッソのこだわりって?
続いて「CAMELBACK sandwich&espresso」もうひとつのメインである、コーヒーをいただくことに。今回は筆者の好みで、塩キャラメルラテを注文しました。

◆塩キャラメルラテが出来上がるまで
水は店の奥にズラッと並んだ4本のフィルターで浄化。不純物が入っていない、よりきれいな水でコーヒーを作っていきます。

店の奥で存在感を放つ4本のフィルター
店の奥で存在感を放つ4本のフィルター

コーヒー豆は、濃厚で深い味わいを出すために通常のコーヒーの約3倍の量を使用。挽いて時間が経つと劣化してしまうため、オーダーを受けてから挽いているそうです。

豆はオーダーを受けてから挽いていきます
豆はオーダーを受けてから挽いていきます

次にパウダー状になったコーヒー豆をタンピングして、マシーンにセット。

コーヒー豆をタンピング
コーヒー豆をタンピング

豆のおいしいところだけが濃縮されたエスプレッソがマシーンからぽたぽたとたれてきます。

濃縮されたエスプレッソがぽたぽた
濃縮されたエスプレッソがぽたぽた

そこにミルクを注ぎ込み、塩キャラメルラテの完成です。ハートのラテアートがおいしさに可愛らしさをプラスしています。

ミルクを丁寧に注ぎ込めば
ミルクを丁寧に注ぎ込めば

塩キャラメルラテの完成
塩キャラメルラテの完成

◆鈴木さんにとってコーヒーとは?
以前は商社で働いていたという鈴木さん。どうしてコーヒーの道に進もうと思ったのかを伺いました。

鈴木さん:「コーヒーは、人の生活の一部になるものだと気づいたからです。仕事を始める時や、一息つきたい時など、コーヒーはスイッチになります。そのスイッチが日々のルーティーンの中に組み込まれることで、生活に欠かせない一部となる、その誰かの生活に影響を与える1杯を自分の手で作りたいと思ったんです」

えん食べ:コーヒーを作るうえでの1番のこだわりは何ですか。

鈴木さん:「その日の気温や湿度によって微調整をしながら、最高のコンディションでコーヒーを提供することです。自分で納得できないものは決してお客様には出しません。エスプレッソマシーンは車と似ていて、技術がないと扱えません。正確な判断と技術でいかにおいしいコーヒーを入れるかということに心を砕いています」

真剣な表情でコーヒーを淹れる鈴木さん
真剣な表情でコーヒーを淹れる鈴木さん

鈴木さんのこだわりは、良質な豆を使い、その時々における最高の状態で提供すること。豆は以前働いていた会社から分けてもらっていますが、ゆくゆくは自身で開発もしていきたいのだとか。目の前の人のことを想って丁寧に淹れたコーヒーだからこそ、深く暖かい味わいになるようです。

えん食べ:自身のコーヒーを一言で表現してください。

鈴木さん:「まだ模索中ですね。目の前の人に誠実な1杯を提供するということに誇りとやりがいを感じています」

エスプレッソのうまみを存分に味わえるSuper Camel Black -Exclusive-
エスプレッソのうまみを存分に味わえるSuper Camel Black -Exclusive-

■キオスクになった理由は?
サンドウィッチとコーヒーのおいしさの秘密がわかったところで、キオスクの謎を解いていきます。

えん食べ:どうしてこの場所でお店を開いたのですか?

成瀬さん:「多くのお客さんに来てもらうことよりも、おいしいものを求めて店を訪れた人に最高のものを提供したいという想いから、喧騒とは少し離れた今の場所を選びました」

来店するのも30~40代の方が多いようです。ただ、下校中の近所の小学生と挨拶を交わすなど年代関係なく町の人に愛されるお店です。

えん食べ:どのようなお店にしたいと思っていますか。

鈴木さん:「イメージは点と点がつながって線になっていくようなお店ですね」

お店で使う食材のほか、店内で売っているグッズの制作も知り合いの方に頼むなど、2人のお店でありながら多くの人が関わっているのが印象的。そこに来たお客さんが、おいしいサンドウィッチとコーヒーを通してまたつながっていく、暖かいお店にしたいそうです。

店内でオシャレなグッズも販売されています
店内でオシャレなグッズも販売されています

■まとめ
閑静な奥渋谷にひっそりと佇む「CAMELBACK sandwich&espresso」。サンドウィッチはパンのおいしさを存分に味わえるように作られ、コーヒーは天気や注文した人のコンディションによって緻密な調整をしながら淹れられています。近所の子どもたちと挨拶を交わし、訪れた人と会話を楽しむ成瀬さん、鈴木さんの強いこだわりと親しみやすい人柄が、このお店を人々の憩いの場、神山町のキオスクにしているようです。絶品サンドウィッチとコーヒーを求めて、またはホッとするようなつながりを求めて訪れてみるのも良いかもしれません。

コーヒー担当の鈴木さん(左)とサンドウィッチ担当の成瀬さん(右)
コーヒー担当の鈴木さん(左)とサンドウィッチ担当の成瀬さん(右)