◆飲み比べが楽しい!

3月に渋谷で開催された「ぴあ日本酒フェスティバル2015 酒春祭」にも、たくさんの女性が訪れていた。20代と思しき若い人を多くみかけたのが印象的。こちらも全国から30の蔵元が出展し、さっそく各蔵に行列ができた。


人気が上昇している蔵のひとつ、富美菊酒造
人気が上昇している蔵のひとつ、富美菊酒造

このイベントには、“変り種”の日本酒も出品された。

積善(長野県)のブースには、「花酵母」を使った日本酒が並んでいた。花酵母はその名のとおり、花から分離した酵母。この日は、ヒマワリ、ベゴニア、つるばらの花酵母を使ったものが出品されていた。なかでもヒマワリの花酵母を使った「積善 純米吟醸 愛山 生原酒」を試飲。口に含むとほのかにハチミツのような甘みを感じた。後味はすっきりしていて飲みやすい。女性のリピート率が高かったように思う。

本老の松(長野県)のブースで女性の関心を集めていたのは、カラフルでおしゃれなビンに入ったお酒。「フランボ和ーズ」「カシ酒グリ」「黒貴妃」と名づけられたそれらは、清酒ベースのリキュールだ。そういえば、銀座のイベントでも物販の「すだち酒」が早々に完売するなど、果実酒系は非常に注目度が高かったようだ。日本酒を飲みなれていない人にも親しみやすいのだろう。

オシャレなボトル、手書きのポップが女性をひきつける
オシャレなボトル、手書きのポップが女性をひきつける

「日本酒のイベントは初めて」だという22歳の女性に印象的だった銘柄を尋ねると、「千代むすび」(鳥取県)と返ってきた。「40、50、60を飲み比べさせてくれて、それぞれに全然味が違っていてビックリした」そうだ。数字は、酒米の精米歩合(磨き具合/%)のこと。数字が小さいほどよく削られていることになり、40は大吟醸、50は吟醸にあたる。…とまあ、こんな知識をただ並べるだけでなく、実際に味を比較しながら話を聞けたことが楽しかったようだ。

ほかの来場者にも話を聞いたが、彼女のように日本酒のイベントは初めてだという人が多かった。かといって、普段から日本酒を好んで飲むわけでもない。巷で人気のフードフェスのような感覚で来てみたのだろうか。そして実際に飲んでみて、違いを感じて、「日本酒っておいしい」「こんな味のものもあるんだ」と気付く。正直なところ、酒屋や飲食店でイベントで飲んだ銘柄と“再会”する機会は少ないのだが、日本酒の魅力が少しでも広まっていけばいいと、いち日本酒ファンとして思う。