先日、所用で福島県いわき市を訪れた筆者。何か美味しいものが食べたいと、いわき出身の知人にオススメのレストランを聞いてみたところ、ちょっと気になる回答が返って来た。

「フラミンゴを見ながらカニピラフが食べられるお店があるよ」


……えっ…?

こういうこと?
こういうこと?

状況がシュールすぎて飲み込めなかったので、とりあえず行ってみることにした。フラミンゴを見ながらカニピラフが食べられるお店「レストラン メヒコ フラミンゴ館」へ――。

ここや
ここや

いわき駅からバスに乗り、沢目十字路のバス停で下車。お店の外観はレストランのような、水族館のような、はたまた秘宝館のような…不思議なビジュアルだ。

不思議なオーラを放つフラミンゴ色の外観
不思議なオーラを放つフラミンゴ色の外観

店内に入ると、広々としたフロアにテーブルや椅子が整然と並べられていて、心地よいジャズミュージックが流れている。なんともオシャレなレストランじゃないの!…と、お店の中央を見ると……いた。フラミンゴがいた。しかも結構な数。数えてみたら16羽いた。

写真左側にご注目。予想を上回るフラミンゴの数
写真左側にご注目。予想を上回るフラミンゴの数

ランチタイムをとうに過ぎていたのでお客さんは少なく、好きな席に座ってよいとのこと。というわけで、目の前に十数羽のフラミンゴが群れている窓際の席をゲットした。この席というのが想像以上にフラミンゴと近くて、何というか…臨場感たっぷりなのだ。

羽根の繊維までよく見えるほど近い
羽根の繊維までよく見えるほど近い

すぐそばにずっとフラミンゴがいるので、メニューを読むのに集中できない。と、店員さんから「同店の1番のオススメはカニピラフです」と助け舟が出された。そうだ、今日の目的はフラミンゴを見ながらカニピラフだった。すぐにカニピラフのレディースサイズ(1,380円)を注文した。

お腹の空き具合によって選べるサイズは4種類
お腹の空き具合によって選べるサイズは4種類

●伝統のカニピラフを食べる

同店のカニピラフは、1970年の創業当時から提供されている、ズワイガニを使った伝統メニュー。

蟹は殻付きか、むき身から選ぶことができるのだが、筆者は初体験だったので殻付きを選択。まず運ばれて来たのは、殻入れのボウルと手を洗うためのジャスミン茶だ。

蟹むきセット
蟹むきセット

蟹をむくと指が脂っぽくなってしまうので、このジャスミン茶でゆすぐと良いのだそう。確かにジャスミン茶で手をゆすぐと、脂っぽさに加えて蟹のにおいもスッと消えた。

続いてカニピラフがテーブルへやって来た。ご飯の上に、ズワイガニが殻ごとドカッと盛られている。

匂いがすでに美味しい!
匂いがすでに美味しい!

バリバリとハサミで殻を切り、身をむくこと10数分(不器用)。ついにすべての蟹の美味しいところをほじくり出すことに成功した。いよいよ実食だ。

ふう…
ふう…

フラミンゴの丸くてふわふわでキュートなおしりを横目に、むき身と一緒にピラフをほおばる。…美味しいっ!! ほんのり磯の香りが鼻から抜けていく。ふかふかに炊かれたお米は「パラッ」と口当たりよく、蟹の旨みでしっかりとコーティングされている。ほんのり“かにみそ”のコクが感じられるような気もする。

ふっくらとした蟹の身も旨みたっぷりで、これまた最高。この一皿に、ズワイガニの美味しい要素のすべてが思い残すことなく詰まっているぞ!

ワンスプーンで口の中が幸せに…
ワンスプーンで口の中が幸せに…

実は来店直前にジャンボカジキメンチを食べて、正直胃袋はパンパンだったのだが、あまりに美味しくてあっさり完食してしまった。シンプルで、余計な脂っぽさがないせいもあるだろう。

●フラミンゴを観察する

さて。カニピラフに集中したあとは、再びフラミンゴに向き直る。動物好きを自負する私(筆者)だが、こんなに間近でじっくりとフラミンゴを観察するのは生まれて初めて。フラミンゴへの好奇心が湧きだして止まらない。

改めて、近いな
改めて、近いな

よく見ると、1羽1羽それぞれ大きさが違う。メスはオスよりもひとまわり小さいのだそうだ。そして色もそれぞれ違う。ピンクやオレンジのグラデーションが艶やかで、みんなとても優美な姿をしている。

ガラスの仕切りがなければ間違いなく攻撃されているであろうレベルの至近距離にいるので、フラミンゴも時折こちらを気にする様子がうかがえる。水を飲み、ふと顔を上げて私の目をじっと見つめ、しばらくしてまた水を飲む、といった具合だ。

シンクロする2羽
シンクロする2羽

その中に、1番濃い朱色をしたフラミンゴがいたのだが、私は彼が群れのリーダーなのではないかと(勝手に)予想した。彼はせわしなく首をぐいぐいと振り回しながら常に周囲を見渡し、ときおり威嚇するような声を上げるのだ。

そして、彼が突然ギーギー鳴き出すと、決まってキェッキェッと合いの手を入れてくるガヤミンゴもいる。なるほどこれがフラミンゴ社会の序列なのか。非常に興味深い。

リーダーっぽい彼
リーダーっぽい彼

毛づくろいをするもの、羽根と片足を伸ばしてストレッチをするもの、「S」の字に折り曲げた首をずっと胴体にすりすりしているもの、片足立ちで眠るもの、10分に1回の割合で、近くにいるフラミンゴに喧嘩を売るもの。

なんだかどんどん人間みたいに見えてきて、それぞれのフラミンゴがとても愛おしくなってくる。気づけば1時間近くフラミンゴを眺めていただろうか…。

ストレッチ
ストレッチ

 
スヤスヤ…
スヤスヤ…

最後には、店員さんにフラミンゴとの記念写真を撮ってもらった。後で気づいたのだが、奇しくもこの日、私はフラミンゴ色の服を着ていた。フラミンゴが特に警戒する様子もなく近づいてきてくれたのは、これのせいもあったのだろうか…?

こういう状況でした
こういう状況でした

●そもそもなぜフラミンゴ?

なぜフラミンゴを見ながら食事ができるレストランなのか、店員さんに聞いてみた。

もともとは遠洋漁業に携わっていたという先代の社長が、メキシコを訪れた際に出会ったフラミンゴの美しさに心奪われ、「こんなきれいなフラミンゴを見ながら食事ができるレストランがあれば、子どもたちもきっと喜ぶに違いない」という思いでオープンしたのだそうだ。

確かに本当にきれい
確かに本当にきれい

ちなみに店名の「メヒコ」というのは「メキシコ」の意。メキシコの公用語であるスペイン語で、メキシコはメヒコと発音されるのだ。

メヒコは、福島県内に2店舗、茨城県内に3店舗を構える(本店は今回訪れたいわき店)。美味しいカニピラフもさることながら、食事しながらフラミンゴを間近で見られるというレアでシュールな素敵体験もできるので、お近くを通る際にはぜひ立ち寄ってみてはいかがだろうか。

…むにゃ?
…むにゃ?