ファミレスからはとんと足が遠のいていた筆者だが、この機会に行ってみることにした。しかし、ただ行って好きなものを飲み食いしてもつまらない。何か基準を作らねば…と考えて、1,000円という予算を設定した。果たして、野口英世氏はどれほどの威力を発揮してくれるのか。

◆ワインが安い!
イタリアンなファミレスチェーン「サイゼリヤ」。料理も低価格帯だが、グラスワインが1杯100円、デカンタが200円からと、とにかくワインを安く楽しめる。

夜、店舗へ行くと、卓上には酒とつまみを掲載したメニューが置いてある。そしてグランドメニューを開くと、イタリアの料理とワインを集めたページ、つまみとアルコールを集めたページと、結構なページが“飲み”に割かれていた。

“飲み”のページにはプロシュート(パルマ産熟成生ハム/399円)、ミラノサラミ(299円)、粗挽きソーセージのグリル(399円)、ポテトのグリル(199円)といったつまみに嬉しいおかずが掲載されている。ランチのメインとしては物足りなかったエスカルゴのオーブン焼(399円)も、ワインのアテにはピッタリだ。
ドリンクは、生ビール(399円)のほか、ワインが豊富。先述したグラスワイン、デカンタのほか、ボトルワインも多数用意されている。
注文したメニュー:白ワイン(デカンタ250ml) 200円、辛味チキン 299円、フレッシュチーズとトマトのサラダ 299円、キャベツとアンチョビのソテー 199円、計997円

人気 No.1だというチキンと、野菜も食べなければとキャベツ。何だかビールに合うものばかりになってしまったので、ワインに合うものを…と、フレッシュチーズとトマトのサラダも注文した。料理3品とドリンクで1,000円以内とは…恐れ入った。

◆焼酎+ドリンクバー=最強
ファミレスといえばドリンクバー。ジョナサンでは、このドリンクバーをうまく活用したメニューが提供されている。それが、焼酎の小瓶とドリンクバーをセットにした「焼酎+ドリンクバー」。焼酎を好きな飲み方で楽しめるうえ、ソフトドリンクも飲み放題という、アイデアメニューだ。

焼酎の飲み方というと、ロック、水割り、お湯割りあたりが一般的だろう。しかし、チューハイに目を向けてみよう。レモン、グレープフルーツ、カルピス、緑茶などなど、多くの種類があるではないか。
同店のドリンクバーには、焼酎を意識したのか、無糖の炭酸水もある。言うまでもなく氷や水はあるし、ティーバッグ用のお湯もある。ジュースもある。楽しみ方は無限大だ。好きな濃さに調整できるのもいい。
普段はチューハイを飲まない筆者だが、せっかくだからと色々アレンジしてみた。コーラなどそれだけで割ってもいいが、濃い目のジュース+炭酸水など、組み合わせるのもアリ。筆者のオススメはコーヒー割り。以前とある居酒屋で提供されていた「コーヒー酒(果実酒の要領でコーヒーを漬けたもの)」を思い出し、作ってみたのだが、なかなかにいける。

つまみも充実している。サイゼリヤ同様、“飲み”のためのページがあり、1品250円のメニュー19品などが掲載されている。サラダ、スープ、揚げ物…と、“ちょい飲み”には十分なラインナップだ。

注文したメニュー:焼酎+ドリンクバーセット 490円、甑島産きびなごの唐揚げ 250円、ヤゲンなんこつ 250円、計990円(税込1,069円)

メニューの価格表記が税別なので、予算を少々オーバーしてしまったが、概ね1,000円でこの内容。特にヤゲンなんこつは、想像以上にボリュームがあって驚いた。焼酎には揚げ物がよく合う。
◆ファミレス以外でも…
“ちょい飲み”需要に応えようとしているのは、ファミレスだけではない。牛丼チェーン大手「吉野家」の一部店舗では、7月から、居酒屋吉野家「吉呑み」がオープンしている。

赤提灯がぶら下がる店頭。1階を通り抜けた先の2階が、吉呑みだ。メニューは、ビールと手ごろな価格のつまみが中心。つまみは、吉野家ならではの牛皿(250円~)をはじめ、枝豆(150円)や冷奴(150円)、刺身(300円)に揚げ物(200円~)と、サクッと食べられるものがそろえられている。もちろん、牛丼などを注文することも可能だ。

注文したメニュー:生ビール 350円、牛皿(並) 250円、枝豆 150円、海老フリッター 250円、計1,000円

◆新たなファストフード?ワンコインピザ
“ピッツァ革命”をうたって急成長している「ナポリス」。本格的な窯焼きピザが手ごろな価格で楽しめることから人気がある。

ハンバーガーチェーンを初めとする多くのファストフード店では、アルコールメニューを置いていない。ビールと合うはずなのに…と歯がゆい思いをすることもしばしば。しかし同店では、カウンター販売式ながら、ワイン、ビール、カクテルなどが提供されている。
メインのピザは、マルゲリータ(350円)、ツナとアンチョビを合わせたトンナータ(450円)、クアトロ フォルマッジ(550円)などと、一般的なデリバリーピザの3分の1程度の価格。レストランで注文することを考えても、かなりリーズナブルだ。ピザのほか、生ハム(500円)、オリーブ(300円)など、ちょっとしたサイドメニューもある。
注文したメニュー:マルゲリータ(350円)、ビールまたはワインとポテトがセットになったアルコールセット(600円)、計950円

安いからといって手を抜いているわけではない。食材は可能な限りイタリア産にこだわっているそうで、もちもちの生地、しっかりと香るバジル&トマトソース、味の強いチーズと、本格的なナポリピッツァが食べられる。特別に開発された生地、のし機、窯を使うことで、作業コストを減らし、低価格帯を実現しているのだそう。

“ファミレス飲み”の世界はいかがだっただろうか。おぼろげな筆者の記憶によれば、夜のファミレスは学生のたまり場という印象が強い。(店側からすると迷惑だろうが)集まって喋ったり課題をしたりミーティング をしたりと、若者でにぎわっていたように思う。しかし久々に訪れてみると、アルコールと料理を楽しむ“大人”がたくさんいた。男女問わず、一人で訪れていた人も 多い。
“ファミレス飲み”の魅力は、“おひとりさま”でもグループでも入店しやすいことと、低価格で楽しめる気軽さにあると考えられる。もともと飲み以外で利用していた人が、飲む目的で利用するようになったということもあるだろう。
日本フードサービス協会によると、大雨の影響などで外食全体の売上が落ち込んだ6月でも、ファミリーレストランは前年の同じ月を上回る売上となり、約92%と落ち込んだパブレストラン/居酒屋を上回っている。“ちょい飲み”需要が貢献しているのかどうかは分からないが、ファミレスが活気づいていることは間違いなさそうだ。
ファミレスで“ちょい飲み”は、飲みのスタイルとして定着するのだろうか。気の合う仲間内や一人でサクッと飲むならファミレスも悪くないと思った。
※表記価格は、2014年8月時点のもの。ジョナサンをのぞいて全て税込。