CNN「Culinary Journeys(世界食紀行)」キャプチャ
日本の「おもてなし」を、気鋭のフレンチシェフの目線から

世界中の有名シェフを取り上げる、米国CNNのドキュメンタリー番組「Culinary Journeys(世界食紀行)」に、日本のシェフが主役として初登場しました。選ばれたのは、2ツ星フレンチレストラン「L'Effervescence(レフェルヴェソンス)」を率いる生江史伸シェフです。

なぜ日本食ではなく、フレンチのシェフなのでしょう。番組を手がけたCNNのプロデューサー、Amanda SealyさんとSarita Harilelaさんにお話をうかがいました。


●テーマは“おもてなし”

今回のテーマは「おもてなし」。生江シェフが案内役を務め、23分間の番組中、茶道、懐石料理、季節の食材、日本酒、そして米を通じて、日本のおもてなしを掘り下げていきます。

出演者はみな、シェフ(73年生まれ)と同年代。「未来をいっしょにつくっていく人をそろえたかった」(生江シェフ)と選ばれた人々です。プロデューサーは、「出会った方々はみな、何世紀も受け継がれてきた家族の伝統を受け継いでいました。日本は伝統文化を新たなジェネレーションに伝えていくという特殊な才能を持っていると感じました」とコメントしています。

CNN「Culinary Journeys(世界食紀行)」の1シーン
撮影中の一場面。生江シェフ(左)の隣は、同年代の京料理の三ツ星料理人

●フレンチシェフが選ばれた理由

なぜ、日本食ではなく、フレンチシェフの生江さんが指名されたのでしょう。

プロデューサーは、「彼は日本人シェフのなかでも、新たなジェネレーションのシェフとして注目されています。フランス料理の技術を使いながら、彼の料理は日本をルーツとしています。彼は生産農場や日本の職人に愛情があり、その愛情を彼の料理で表現しています」とコメント。

シェフも自身の料理について、「あえて表現するなら、日本の味と西洋の技法の融合」と話します。例えば、季節ごとに変わっていくカブの味わいを表現した一皿。バターで焼き上げたジューシーな夏のカブには、本枯節などを使っただしのスープがついています。日本だからこそできた組み合わせでしょう。

CNN「「Culinary Journeys(世界食紀行)」、レフェルヴェンソスのカブ
バターとだし。想像以上に奥深いハーモニーが生まれます

食後、お薄をたてるようす(レフェルベンソス)
食後には、座席横でたてた「お薄」が提供されます

レフェルヴェンソスの「お薄&world peace」
“お茶菓子”は、華やかな洋のスイーツたち

さらに、彼のユニークなバックグラウンドも決め手となりました。

実は生江シェフ、大学卒業後に料理の世界に入ったという、料理人としては異色の経歴の持ち主。海外のレストランに勤めた経験もあり、だからこそ、「日本の文化や伝統で新たに気付いたことに敬意を払えたのだと思います」(プロデューサー)。かつ、それを英語で説明できるというのも、理由のひとつだったようです。

●伝統を受け継ぐ

最後に、もっとも印象的なシーンをプロデューサーにたずねました。

「今まで酒の醸造用に米が蒸されている光景を見たことがありませんでした。男性たちが手作業で一つ一つの工程を進めている姿は感激しました。それは簡単な仕事ではありません。一つ一つの瓶に詰められた職人の気配りを、人々は味わうからこそ酒はおいしいのだと思います。」

CNN「Culinary Journeys(世界食紀行)」、寺田本家で酒を仕込むようす
伝統的な日本酒づくりのようす

番組の放送は、8月27日20時30分、同28日13時30分、同29日12時。また英語版CNNのサイトでは、アーカイブも見られます。世界が注目するトップシェフが全世界に向けて紹介する「おもてなし」には、日本で暮らすわたしたちにとっても新たな発見があるかもしれません。