
今でこそケーキショップやスーパーなどでも目にするミルクレープだが、20年前はこれほど普及していなかったように思う。そんな中で発売され、なぜ高い人気を得ることができたのか?実食の上、その理由を考えてみたい。
■そもそもミルクレープって?
クレープ自体はフランス発祥だが、ミルクレープは日本発祥だとされている(発祥店は諸説あり)。「ミル」はフランス語で「千」を意味し、直訳で「千枚のクレープ」となる。実際に千枚重ねられていることはまずないので、「たくさん」をイメージしたのだろう。「千切り」とかに似ている。
■実際にドトールのミルクレープを食べてみる
ミルクレープについておさらいしたところで、実際にドトールコーヒーショップのものを食べてみよう。

薄いクレープ生地とホイップクリーム。このふたつがひたすら交互に重ねられ、美しい断面を形作っている。天面はキャラメル風味のナパージュでつややかな仕上がり。

フォークを入れると、「つぷつぷつぷ」と、生地を抜けるごとにしっとりとした音が聞こえる。指先に伝わる感触も心地よい。

口にするとクリームがしゅわっととけ、ほどけた生地をたゆたわせる。ミルキーなクリームの波が引くと、生地が舌の上にやわらかく着地。噛めばしっとり、くにゃりとした独特の食感とともに、やさしい甘みとタマゴの味わいが広がる。

表面のナパージュは、ぷるんとした食感と甘くほろ苦いキャラメル風味でアクセントに。全体としては甘さは抑えめの印象。クリームのコク、生地の小麦やタマゴの風味など、素材の味わいが感じられる。
もちろん、ドトールのブレンドコーヒーとの相性も抜群。しっかりとしたコーヒーの苦みに、ミルクレープのやさしい甘みは負けてしまうのでは?と危惧したが、苦みが甘みを引き立て、むしろ味わいの輪郭がよりくっきりと感じられた。

■人気の理由を考察
大前提として、やさしい甘みで万人に受け入れられるおいしさであることが挙げられるが、そのほか以下のように考察できた。
その1:クレープ生地がたっぷりで贅沢感がある
クレープ生地とクリームが何層にも重なった姿。手間のかけられた雰囲気に加え、「一度にこんなに!」という贅沢な気分が味わえる。とくにクレープの生地が好き、という人には至上の一品であろう。

その2:男性のクレープ需要に合致
オフィス街に店舗が多いこともあり、ビジネスマンなど男性人気も高いドトール。一方、クレープといえば食べ歩き用のテイクアウト店がほとんどで、メインターゲットは若い女性とみられる。「クレープは好きだけど、ひとりでクレープショップは行きづらい」という男性がドトールでミルクレープに出会い、安息を見出しているのではないだろうか。
その3:ミルク+クレープ=ミルクレープ?
ミルクレープの名前の由来は前述のとおりだが、名前を見て「ミルク味のクリームとクレープを合わせたケーキ」と想像する人もいたのでは?初めて出会うケーキでも、名前から味が想像できれば、注文のハードルはぐっと下がる。実際に味もイメージとそう遠くないため、違和感なく受け入れられていったのではないだろうか。
考察は以上となる。これらが全てではないだろうし、正しいとも限らない。いずれにせよミルクレープのどっしりとした姿からは、これからも末永く定番としてあり続けるであろう安心感が感じられた。
