昆虫、好きですか?いえいえ「採集」するのが、ではなくて「食べる」のが、です。今日は将来の食糧難に向け、昆虫食に真剣に取り組んでいるグループ「Ento」を紹介します。

「Ento」が試作した昆虫食
「Ento」が試作した昆虫食


「Ento」は、英国の Royal College of Art と Imperial College London  が合同で取り組んでいるプロジェクト。目指しているのは、「昆虫を使って作った食品の開発及び流通」と「人々から昆虫を食べることに対する抵抗感を無くすこと」の2つだそうです。

Ento のプロジェクトメンバーは、昆虫を食べることが世界の食糧不足を解消する有力な方法の1つと考えています。Ento によれば、現在のペースで世界人口が増加を続けた場合、2050年には2012年の1.7倍の食糧が必要となり、牛や豚、それに鶏といった肉畜の飼育が追い付かなくなるのだそうです。

この食糧難から人類を救うのが昆虫食。Ento によれば、昆虫は飼育効率がとても高いのだそう。例えば、牛を飼育する場合、10kg の飼料からわずか1kgのタンパク質しか生み出せません。でも昆虫であれば、10kg の飼料から9kg のタンパク質を生みだすことが可能なのだそうです。

昆虫は、10kg の飼料から9kg のタンパク質を生みだせる
昆虫は、10kg の飼料から9kg のタンパク質を生みだせる


牛の飼料としては、トウモロコシなどの穀類も多く使われており、これが人間の食料不足を加速させます。でも昆虫の飼料としては、人間は食べない雑草などが利用できます。しかも、昆虫は低脂肪、高タンパクで、様々なビタミンを含み、体にもとても良いとのこと。

昆虫は低脂肪、高タンパク
昆虫は低脂肪、高タンパク


こんな良いことづくめの昆虫食なんですが、でも1つだけ大きな問題があります。それは、人々の多くが昆虫を食べたいとは思ってないってこと。そりゃそうですね。

Ento は今年、この大問題を解消するための長期計画を公表しました。

Ento による長期計画
Ento による長期計画


Ento は、まず来年に英国で「昆虫食レストラン」をオープンする予定だそうです。このレストランでは、一見すると昆虫とは全くわからないようなメニューのみを提供し、人々から昆虫食に対する抵抗感をなくすことを狙います。メディアなどへの積極的な露出も行い、昆虫を食べることが、エコで先進的でおしゃれなものというイメージの拡散も行います。

Ento が来年オープンする予定の「昆虫食レストラン(イメージ)」
Ento が来年オープンする予定の「昆虫食レストラン(イメージ)」


2015年には、昆虫食レストランで販売するメニューの一部を弁当ボックス「Entobox」としてスーパーでも販売開始する予定。価格も手頃なものにして、メディアで「昆虫食レストラン」を知り興味を持っていた人が、手を出し易いものにします。

スーパーなどで販売する「Entobox」
スーパーなどで販売する「Entobox」


この後、2017年には電子レンジで調理可能な冷凍食品、2018年にはパスタソースなどの分野にも進出し、徐々に昆虫が食卓にのぼることが当たり前という雰囲気を作りだしていきます。

2018年頃販売予定の「乾燥コオロギのミンチ」  ひき肉代わりにパスタに入れて使います
2018年頃販売予定の「乾燥コオロギのミンチ」
ひき肉代わりにパスタに入れて使います


そして、2020年までには、昆虫の外見を保った「コオロギ」や「ゴミムシダマシの幼虫」を、牛肉や豚肉と同じようにスーパーで販売できるまでにする。これが Ento の長期計画の全貌です。

「コオロギ」のパッケージ  これを受け入れらる日が来る?
「コオロギ」のパッケージ
これを受け入れらる日が来る?


2020年と言えば、いまから8年後。Ento の計画がうまくいけばわずか8年で「お母さん、今日の晩御飯なに?」「ゴミムシダマシの幼虫の炒め物よ」「やったぁ!」といった会話が家族の間で当たり前になる、はずです。……うーん、でも本当にそんなことが起こるのでしょうか?

Ento プロジェクトは、次のように述べています。

「自分たちが虫を食べる姿を思い浮かべるのは、難しいことかもしれない。でも、生き延びるには、他に選択肢はないかもしれないのだ」

Ento-デザインプロセスビデオ