
イベントに招待された200名を超えるジャーナリストと研究者たちは、目の前で人工肉ハンバーガーが調理され、試食される模様を目撃した。

人工肉を試食した栄養学研究者の Hanni Rutzler 氏は、人工肉バーガーの味を次のように表現している。
「もっと柔らかいかと思ったけど、そうではなかった。脂肪分が全くないことは良くわかった。味の面では、塩コショウが足りない」

フードライターの Josh Schonwald 氏は、次のように述べた。
「食感は肉のように感じられた。足りないものは、脂肪だ。脂肪分は全く感じられない。噛んだ瞬間、普通のハンバーガーだとは思った。でも、完全に普通だとは思えなかった理由は、ケチャップだろう。僕は20数年間ハンバーガーを食べ続けているけど、ケチャップがかかっていないハンバーガーは食べたことがない。オニオンやハラペーニョやベーコンも欲しい」
このハンバーガーを開発したのは、オランダ マーストリヒト大学教授の Mark Post 氏。Post 氏は、この人工肉ハンバーガー開発に日本円にしておよそ3,250万円を費やした。これは、通常のハンバーガーがおよそ10万個買える金額だ。開発資金については、米国 Google の共同創業者 Sergey Brin 氏からも提供を受けたという。

今回試食されたハンバーガーに使われた人工肉は、牛から採取された細胞組織を培養して作られたもの。採取された細胞は、ペトリ皿で細胞分裂を開始する。1個の細胞が、1兆個にまで分裂するという。分裂した細胞は自然につながって筋管細胞となり、さらに筋肉繊維へと成長する。








実験室で培養された筋肉繊維には、栄養を運ぶ血管は存在しない。このため、筋肉組織の成長過程では、細胞に人工的に栄養素が与えられたという。また、本物の牛と違い、人工肉は自発的には運動しない。このため、筋肉が衰えないよう、人工肉に対してストレッチやマイクロエクササイズも施されたそうだ。さらに、人工肉には血液が含まれないため、本物の牛肉の赤い色を持っていない。このため、人工肉は赤カブの汁で着色されたという。
こうして作られた筋肉繊維2万本分の人工肉に、つなぎを入れて作ったのが、今回の人工肉バーガーのパティだ。

Post 氏は、人工肉の開発は様々なメリットをもたらすと述べている。例えば、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素は、牛の飼育によって排出されるものが全体の18%を占めていると Post 氏は述べている。人工肉が実用化され、牛の飼育頭数を減らすことができれば、温暖化ストップにも貢献できると Post 氏は主張している。
