ヨーロッパに「“R”のつかない月には牡蠣(カキ)を食べてはならない」という言い伝えがあります。これはつまり、「R のつかない May(5月)、June(6月)、July(7月)、August(8月)の4か月間は“牡蠣”が美味しくないから食べるな!」という親切なアドバイスらしいのですが、それはあくまでも昔の話で、現在では春・夏にも美味しい牡蠣が食べられるようです。

このあたりの話も含め、“牡蠣の楽しみ方”について、オイスターバー&レストラン「オストレア」を都内で6店舗展開するバル・ジャパンの佐渡俊彦さん、遠藤恵美さんに新店舗の恵比寿店でお話をうかがいました!


●“春夏だからこそ”美味しい牡蠣がある

牡蠣は大きく分けて、真牡蠣(マガキ)と岩牡蠣(イワガキ)の2種類があります。日本では一般的に、牡蠣の旬は“冬”と言われていますが、岩牡蠣に関しては春夏がシーズン。暖かい時期だからこそ美味しくなる牡蠣がたくさんあるそうです。

取材時(4月後半)、遠藤さんが選んでくれたのは、小ぶりなサイズで甘みのある広島県産「先端」、ふっくらしていてミルキーな味わいのアイルランド産「アイリッシュ プレミアムオイスター」、肉厚なのにとろりとやわらかい石川県産「能登の春かき」など、この時期オススメの8品種。

「牡蠣は1年を通しても、その季節、その日、その瞬間で味が変わるもの。たとえば春には『能登の春かき』『さくらかき』などが特に美味しく食べられます。四季で異なる牡蠣の味わいを、多くの方に楽しんでいただきたいです」(遠藤さん)。

1週間経つだけでぐっと美味しくなることも!
1週間経つだけでぐっと美味しくなることも!

ちなみに同店の牡蠣は少し“しょっぱく”感じます。これは、剥くときになるべく真水をかけずに提供していることが関係しているそう。「牡蠣を真水に入れて保存しておくと水分を吸い込んで大きくなり、見た目は良くなります。しかし、味が水っぽくなるため、美味しく食べるのには適していません。オストレアでは、この“しょっぱさ”こそが『本来の牡蠣の味わい』であると考えています」(佐渡さん)。

なるほど…!確かにこの“しょっぱさ”は、甘みのある牡蠣の身との相性もいいように感じました!

●牡蠣はワインやコーヒーに似て“こだわりが持てる”

産地や育て方、食べる時期などいくつもの要素が組み合わされて出来上がる「牡蠣の味」。食べる順番やお酒との組み合わせでもさらに味わいが変わってくるため、牡蠣は“大人のこだわり”を十分に満たしてくれます。

とはいっても、牡蠣に詳しくない人からしたら「オイスターバー」というお店は少し敷居が高いように感じるかもしれません。そんなときは、とりあえず店員さんに聞いてみましょう。20種類以上もの牡蠣ブランドを扱っている同店では、各種の味わいや季節のオススメ、美味しく食べられる順番まで、きっちり教えてくれるようですよ!

「味がさっぱりした品種から順に食べていくのが、たくさんの牡蠣を美味しく味わう基本。牡蠣の味を大きく分けても、ソルティなものからミルキーなもの、甘みのあるもの、チーズのような味が楽しめるものまで様々な種類があります。自分で“ストーリー(食べる順番)”を考えながら食べるのも楽しみの一つです」(遠藤さん)。

味を想像しながら食べ比べるのも面白い!
味を想像しながら食べ比べるのも面白い!

牡蠣のマニアックさたるや、まるでコーヒーやワインの様。一度好きになったら、とことんハマってしまいそうです。佐渡さんによると「牡蠣は女性のファンも多いが、特に男性でハマる人が多い」とのこと。

「1つの牡蠣が出来上がるまでに、育てる海、気候、土地、生産者、調理の仕方など様々なファクターがあります。要素が1つずれるだけでも全く違う味になるため奥が深く、知識を蓄えて、こだわればこだわっただけ美味しいものに巡り合えます。」(佐渡さん)。

このように、牡蠣は非常に奥深い食べ物。グルメな人以外にも、こだわりが強い人、薀蓄好きな人、やりこみ要素のあるゲームが好きな人、「モノ・○ガジン」を定期購読してるよって人などに全力でオススメしたい食べ物です!

殻に石がくっついた牡蠣!なかなか貴重らしい!
殻に石がくっついた牡蠣!なかなか貴重らしい!


●安全に扱えば、牡蠣は“アタらない”

「牡蠣=アタるかもしれない」という認識を持っている人も多いかと思います。しかし、近年では養殖技術や輸送技術が発達しており、食中毒を予防する環境がしっかり整っているため、心配しすぎる必要はないようです。

牡蠣は、安全に扱えば安全に食べられる」(佐渡さん)。

特に印象に残った、力強い一言でした。佐渡さんによると同店では、海水の紫外線殺菌などを徹底している、信頼できる生産者のみと取引きを行なっているほか、細菌の細胞を死滅させられるという「オゾン除菌脱臭機」(人や自然には無害)を店内に導入。また、細菌類を滅菌できるハンドソープを全店で採用し、まな板やキッチン用具などの煮沸消毒、ノロウィルスを滅菌できるという衛生除菌水「プリジアプロ」の使用も徹底するなど、安全管理に積極的に取り組んでいるそうです。

ちなみに、“同店で管理する牡蠣”を数千個も食べているという佐渡さんも、入社以来 7年間食べているという遠藤さんも、一度としてアタったことがないとのこと。なんと心強い…、なんだか安心しました。

最後は少し真面目なお話でしたが、牡蠣へのイメージが「アタるかもしれない…」から「まずアタらない!」に変わったのではないでしょうか(オストレアのように“安全に扱っているお店”に限りますが…)。

余談ですが、本稿では全く触れなかった「牡蠣食べる=モテる」理論(佐渡さん)も気になるところ。こちらに関しては次の機会に!美味しくて楽しい“牡蠣ライフ”、冬まで待たなくても今すぐ始められます!皆さんもディナーの選択肢に「牡蠣」を加えてみては?

カキフライも絶品でした…!
カキフライも絶品でした…!