東京・高田馬場一帯には、ビルマ(ミャンマー)料理店や雑貨店が点在し、ミャンマーきっての都会になぞらえて「リトルヤンゴン」とも呼ぶ。駅前のビルを上がれば、むこうのお菓子やお茶、野菜にフルーツまで買える。
ビルの中は異国
高田馬場駅の早稲田口を出てすぐのビル「TAK11(タックイレブン)」は居酒屋などと並んでミャンマー料理店や雑貨店が集まっている。エレベーターで8階に上がると、自動ドアが開いたとたん、日本ではまだあまり嗅ぐ機会がない野菜やフルーツ、香辛料の匂いがたちこめる。
廊下にそっていくつもある部屋のそれぞれがお店になっている。駅からすぐだというのに、あまり日本人は来ないらしく、働いている人もお客もちょっとびっくりした顔でこちらを見ていた。
今回訪れたのは「TREASURE MYANMAR(トレジャーミャンマー)」というところ。以前は「バガン」というお店があった場所だ。
店先には南アジア料理には欠かせないすっぱい豆と言うかフルーツというか、タマリンドの加工品が陳列してあった。奥に入ると、さして広くない空間を埋め尽くすように、缶詰やレトルト食品や各種の食材、飲み物などがずらりと並んでいる。日本語で説明がついたものはほぼ皆無。
何と宝石も売っている。ミャンマーの翡翠(ヒスイ)や真珠(シンジュ)だ。トレジャーミャンマーではどうやらこちらを主に扱っているようだ。
とはいえ花より団子、ヒスイよりお菓子。お店の人につたない英語で「お菓子とお茶が欲しい」と伝えようとすると、日本語で応対してもらえ、最近有名なお菓子とお茶を教えてもらった。
金のエビのクッキー?
お菓子のおすすめは「Shwe Pu Zun CONFECTIONARY」というパッケージに金色のエビを描いたクッキーのようなもの。見た目はかわいらしい洋菓子のようだけれど、もしかしてエビが入っているのだろうかとけげんに思いながら袋を切って食べてみる。
結論から先に言うと、エビは入っていなかった。普通の焼き菓子で質は高い。日本の高級な洋菓子店がケーキなどとともに置いているクッキーを思い出した。ほどよく甘く、ほくほくと歯にもろく、舌の上でくずれたあとの口どけもよい。紅茶と一緒につまむのにぴったり。
しかし異国の息吹を感じるリトルヤンゴンで買ったものに、こんなに食べ慣れた味がするのは予想外だった。
金の山のお茶?
お茶は金の山のイラストが入ったパッケージに、アルファべットで「SHWE TAUNG」、漢字で「金山炒香茶」などと書いてある。
炒香茶という意味はよく分からないが、とにかく淹れてみる。たっぷりの茶葉にお湯をそそいでから一度ゆすいで捨てる。あらためてお湯をそそいで、待つこと数分。色が濃くなってきたら少しずつグラスに移して味を見てみる。
とても変わった匂いがする。確かに、豆かなにかを炒めたようだ。舌にしぶみとにがみがはっきり残る。でも嫌いではない。
さきほどの金のエビクッキーを食べながら飲むと、やわらかい甘みと、はっきりしたにがみとがコントラストになってよい。
風変わりなお茶と、どこか身近な感じがするお菓子。高田馬場にあるリトルヤンゴンの近さと遠さを意識させた。
住所:東京都新宿区高田馬場2-19-7 TAK11(タックイレブン)