全国に方言があるように、そして津々浦々のご当地グルメがあるように、あるエリア独特の食べ物の呼び名というものが存在します。

たとえば、「タルト」。関東で生まれ育った筆者は「タルト」と聞くと、小麦粉とバターを合わせて焼いたサクサクの生地に、クリームやフルーツなどを詰めたケーキ状のものをイメージしていました。キルフェボンとか、パブロのタルトみたいな。


が、愛媛県松山市内のとある喫茶店で「アイスコーヒー タルト付き」を注文したら、これが出てきたんです。

アイスコーヒー タルト付き
アイスコーヒー タルト付き

これは…ロールケーキ風の何か
これは…ロールケーキ風の何か

そう。愛媛県民たちにとって「タルト」とは、ふわふわのカステラ生地で、しっとりしたあんこをたっぷり巻き込んだお菓子のこと。中にごろっと栗が入ったものや、柑橘風味のあんを包んだものもあります。

これがおいしいんですよ
これがおいしいんですよ

一説によると、松山の初代藩主・松平定行公が、長崎に入港したポルトガル船で出会った「タルト」と呼ばれるこのお菓子を気に入り、その製法を持ち帰ったのがはじまりだとか。

そんなわけで、地元の人たちは「タルト」と聞けば、何よりもまず愛媛・松山の“郷土菓子”であるロール状のそれを思い浮かべるんだそう。なお、クリームやフルーツたっぷりの焼き菓子のことも、それはそれで「タルト」と呼ぶそうです。

中でも、愛媛県松山市のお菓子メーカー 一六本舗の「一六タルト」が有名どころ。郷土菓子とはいえ、最近はオンラインショップや全国の百貨店でも販売されているので、すでに愛媛のタルトをご存知の方も多いかもしれませんね。もし身近で見かけたら、松平さんが感動したという味をぜひ確かめてみて!