シンガポール名物「チリクラブ」。大きなカニに甘辛いチリソースをかけた、シンガポール生まれのメニューです。シンガポールに行くと、観光客向けからローカル向けまで多くの店で提供されていて、どこに行こうか迷っちゃう!

そんなときは、現地の人の意見を聞くに限ります。えん食べ編集部は、現地ガイドがオススメする2店で、真っ赤なチリクラブを食べ比べてみました。実はチリクラブ初体験の私(筆者)。どんな味に出会えるのか楽しみです!


シンガポール名物「チリクラブ」の食べ比べポイントは?
シンガポール名物「チリクラブ」の食べ比べポイントは?

◆チリクラブとは

ドウマンガニ、スリランカクラブ、マッドクラブといったカニに、チリやトマト(ケチャップ)、卵、酢などが入ったソースをかけたのがチリクラブ。エビチリのカニ版といったところでしょうか。その歴史は以外と浅く、考案されたのは1950年代。はじめはチリとトマトソースを合わせただけのソースだったのが、次第に現在のような形式になっていったそうです。

食べるときは、器具を使って殻を割り、身にソースをたっぷりとつけます。残ったソースは、饅頭(マントウ)をひたして召し上がれ。ものすごく手が汚れるけれど気にしたらダメ。手をベタベタにしながら豪快に食べるのが、醍醐味なのです。フィンガーボールやおしぼりは最後まで取っておきましょう。途中で使っても、また汚してしまうことになるので…。

それでは、私が訪れた、現地ガイドオススメの2店のチリクラブをご紹介します。ちなみに今回は単身取材だったため、食べている途中の写真はありません。カメラの保護を優先してしまいました…ごめんなさい!

◆LONG BEACH Seafood Restaurant(ロングビーチ・シーフード・レストラン)

1軒目は、LONG BEACH Seafood Restaurant(ロングビーチ・シーフード・レストラン)。ブラックペッパーで味付けした「Black Pepper Crab(ブラックペッパークラブ)」発祥の店といわれる有名な海鮮レストランで、多くの観光ガイドにも掲載されています。私は、市街地と空港の間、イーストコートと呼ばれるエリアの店舗を訪れました。

店内にある大きな水槽には、さまざまな種類のカニが入っています。これらの中から大きさや種類を指定したりして調理してもらうのだとか。私はコース料理を予約していたので、カニを眺めながら料理の到着を待ちます。

日本では見かけないカニ(とエビ)ばかり
日本では見かけないカニ(とエビ)ばかり

人生初のチリクラブ。大きなお皿の上で湯気を立てるカニからは、甘酸っぱい香りがただよってきます。お皿の上を見ると、大きなカニが丸ごと、赤いソースの海の中に浮かんでいます。その“海”は、スイートチリソースの中にたまごを溶いたような、赤いかき玉汁のような見た目。

辛そう…
辛そう…

まずはソースをひと舐め。見た目ほどは辛くなく、濃厚なトマトソースに溶き卵が入っているといった印象でした。卵のおかげか、コクとまろやかさを感じられます。食感は、どろっとした見た目に反して、ふわっと軽めでした。赤くて辛そうなソースなのに“柔らか”くてまろやかで、これだけをずっとなめていたくなるくらい。ぷりっぷりのカニの身にソースをたっぷりと付けて食べると、もうたまりません。

マントウは、ぎっしりつまって重量感がある、揚げたタイプでした。ほんのり甘いマントウをピリ辛ソースにひたしてパクリ。ひたひたになるまで浸すと、より美味しいかも。現地では、ソースをチャーハンにかけて、あんかけチャーハン風にして食べることもあるそうです。

食べ終えた頃には、手は見る影もないくらいベタベタになっていました。とはいえ、指についたソースも残さずなめたけれど(お行儀悪くてごめんなさい)。ちなみに、現地ガイドの娘さん(20代)は、あまりにチリクラブが好きすぎて、きれいな食べ方や手に匂いを残さない洗い方を独自に編み出したそうです。ぜひ伝授していただきたかった…!

◆Dragon Phoenix(ドラゴン・フェニックス)

2軒目は、かつてホテルニューオータニがあった地に立つ NOVO HOTEL 内にある中華料理店「龍凰大飯店(Dragon Phoenix/ドラゴンフェニックス)」。シンガポールレストラン界の四天王のひとり・Hooi シェフが開いた、中華料理の名店です。

名物は飲茶らしいのですが、チリクラブも有名。特別に入れてもらった厨房では、カニを初めとする材料が調理されるのを待っていました。大きな大きなカニは、さすが格式高いレストランといったところでしょうか。ちなみに、この日は結婚式が催されていたため厨房が慌しく、調理場面までは撮影できませんでした…残念。

とにかくカニがデカイ
とにかくカニがデカイ

さて、到着したチリクラブは、大人数で囲む用…ということで、カニ2杯分が盛りあわされていました。ソースはロングビーチよりもやや赤く、卵が少なめな印象。

少し赤め?
少し赤め?

ソースは、ロングビーチのチリクラブよりも酸味が効いていて、濃厚なのに後味をさっぱりとさせてくれます。現地ガイドによると、この酸味が同店のポイントで、甘み、酸味、スパイスのバランスがとてもよいのだとか。とんがりすぎず、マイルドすぎず、パクパクと食べ進められます。もちろん、ぎっしりと身がつまったカニの身も絶品。

そして何より私が感動したのは、マントウのクオリティでした。こちらも揚げてあるタイプですが重くなく、まるでクロワッサンを食べたときのように、小麦の風味や甘さがふわっと広がるのです。マントウってギトギトしていて食べづらいイメージが強かったのですが、大きく印象が変わりました。ソースとの相性は言わずもがな。

◆味のポイントは?

2店舗のチリクラブを食べ比べてみた結果、ソースの味付けのなかでも「酸味」に違いがあるように感じました。酸味控えめのマイルドな味も、酸味を効かせた強い味も、それぞれに楽しめます。また、マントウの違いにもビックリ。ふわふわ度や揚げ上がり、ソースとの相性は、お店ごとに特徴があるようです。次回は別のレストランでチリクラブを食べるぞ…!

ちなみに、今回食べた2つのチリクラブは、現地の人向けの味付けよりもチリを抑えてあったそうです。観光客だと分かると、辛さを控えめにしてくれるようなのです。「見た目ほど辛くない」と思ったのは、このおかげかも…。“現地の味”を試したければ、予約時や注文時に伝えた方が良さそうです。