こどもの頃、風邪で寝込むと母がプリンを買ってきてくれたものでした。「ずっと風邪をひいていれば、プリンが食べ続けられるのでは?」などと思ったものです。

プリンに想いを馳せていたところ、「うれしいプリン」なるプリンが存在するとの情報がもたらされました。「うれしい」?「おいしい」ではなく?それってどんなプリンでしょう?ほかに手に入れた情報は、お店は中目黒にあり「マハカラ」という店名であること、プリンはすべて手づくりで、「日本一こだわり卵」を使用しているということだけ...。これはもう、お店で直接お話を聞いてみるしかない、そして食べてみるしかない!


「うれしいプリン」ってどんなプリンだろう?
「うれしいプリン」ってどんなプリンだろう?

ということで、向かいましたは中目黒。雪のちらつく中、駅から歩くこと7分ほど。目黒川沿いを少し入ったところに「うれしいプリン」のお店「うれしいプリン屋さん マハカラ」はありました。

黄色い丸い看板が目印「うれしいプリン屋さん マハカラ」
黄色い丸い看板が目印「うれしいプリン屋さん マハカラ」

◆うれしいプリン「マハカラ」って?
ドアを開けると目に飛び込んできたのは、ショーケースにずらっと並んだ、ラベルもカラフルな色とりどりのプリンたち。これが噂の「うれしいプリン」!兵庫県産の「日本一こだわり卵」を使用し、毎朝お店で手づくりされています。常時販売されているのは「カスタード味」「白プリン(ミルクコーヒー味)」「抹茶プリン」の3種類。この日はこれらに加えて季節ごとに入れ替わる「季節のプリン」として「かぼちゃプリン」「チーズプリン」「チョコプリン」の計6種類の「うれしいプリン」に出会うことができました。

ショーケースに行儀よく並ぶプリンたち
ショーケースに行儀よく並ぶプリンたち

看板商品の「うれしいプリン カスタード味」
看板商品の「うれしいプリン カスタード味」

味の説明や甘さ・固さなどを説明する表
味の説明や甘さ・固さなどを説明する表

店内は、ガラス張りの作業スペースが見渡せるようになっています。

プリンを作っているところが見渡せます
プリンを作っているところが見渡せます

壁はたまご色に塗られ、カラメルをイメージさせる模様が。まるでプリンの中にいるような気持ちが味わえます。

プリンに包まれているかのような店内
プリンに包まれているかのような店内

そしてさらに、壁をよく見ると...

壁の下の方に注目
壁の下の方に注目

壁の模様に擬態した「マハカラ」の文字が!

「マハカラ」の文字が隠れていました!
「マハカラ」の文字が隠れていました!

◆「うれしいプリン」を実食!
今回いただく「うれしいプリン」は3種類。スタンダードな「カスタード味」、バレンタインにちなんで「チョコプリン」、そして「チーズプリン」です。

左から「チーズプリン」「カスタード味」「チョコプリン」
左から「チーズプリン」「カスタード味」「チョコプリン」


◆うれしいプリン「カスタード味」
まずは一番人気という「カスタード味」から。

ラベルもたまご色の「カスタード味」
ラベルもたまご色の「カスタード味」

あたまにはミントが飾られています
あたまにはミントが飾られています

スプーンを差し入れると抵抗なく進み、とってもやわらか。しかし、すくった姿はしっかりしていて頼もしさを感じます。

するっとスプーンが入るやわらかさ
するっとスプーンが入るやわらかさ

すくった姿もぷりんとなめらか
すくった姿もぷりんとなめらか

口に入れると、なめらかにとろけていきます。甘さは控えめであっさりしてるかと思いきや、次第に口の中に濃厚な卵の味が広がります。底のキャラメルソースはさらっとした液状で、色も透き通った琥珀色。シンプルながらしっかりした甘さはプリンと合わせて口に運ぶと、考え抜かれたバランスであると感じさせられます。とても濃厚にもかかわらずくどさを感じさせないのは、「日本一こだわり卵」のなせる技なのか、お店のレシピによるものなのか。力強いあと味ですが甘さがしつこくないので、すぐにまた口に運んでしまう。確かにこのおいしさは「うれしい」を感じる味です!ひと口ひと口が「うれしい」に直結する味、そして止まらない!

◆うれしいプリン「チョコプリン」
お次はバレンタイン当日ということで選んだ「チョコプリン」。

ラベルもピスタチオの飾りもオシャレな「チョコプリン」
ラベルもピスタチオの飾りもオシャレな「チョコプリン」

上にはピスタチオが飾られています。

張りのある表面にひび割れがたまらない
張りのある表面にひび割れがたまらない

こちらはさらに柔らかく、まるでチョコムースのような食感。単なる“チョコ味”ではなく、チョコレートそのもののようなコクのあるカカオの味を感じさせます。生チョコにも通ずるものがあり、チョコ好きの方にも好まれるはず。甘酸っぱいいちごカラメルとの相性もばつぐんで、お互いを引き立て合います。いつまでも口の中にとどめておきたいのに、どんどん口の中で溶けていってしまう...よって、スプーンを持つ右手に休む暇はありません。

いちごカラメルの色もキレイです
いちごカラメルの色もキレイです

◆うれしいプリン「チーズプリン」
最後はめずらしい「チーズプリン」。

レーズンとミントで飾られた「チーズ味」
レーズンとミントで飾られた「チーズ味」

色はカスタード味に似ていますが、あたまにはレーズンが飾られ、ソースにはレモンピールが観測されます。チーズの濃い香りも感じられます。

透き通ったレモンカラメルにはレモンピール入り
透き通ったレモンカラメルにはレモンピール入り

断面のざらっとした質感も魅力的
断面のざらっとした質感も魅力的

チーズプリンは、極限までなめらかにしたレアチーズケーキのよう。ムースというには密度が濃く、口当たりはやはりプリン。こちらもかなり濃厚で、口いっぱいにチーズの風味が広がります。しっかりした甘味は、さっぱりした酸味のレモンカラメルとともに口に運ぶとまた違った味わいをみせます。また、カラメルに入ったレモンピールは苦みとともに食感でもアクセントに。甘さ、酸味、チーズの味がバランスよく組み合わせられている一品です。

◆プリンまとめ
どのプリンもフレーバーの味がはっきりしていて、数種類を続けて食べても全く飽きませんでした。ベースのプリンをアレンジして数種類に...というのではなく、フレーバーごとにその味をめいっぱい楽しめるレシピが作られている印象です。どれを食べても、その味に感動してうれしくなってしまう、まさに「うれしいプリン」。他の味にもきっと、まったく違った驚きと感動が用意されていることでしょう。

「抹茶プリン」は海外の方に人気が高いそう
「抹茶プリン」は海外の方に人気が高いそう

◆「うれしいプリン」って?
印象的で、すこし不思議な名前の「うれしいプリン」。その由来を伺ったところ、スタッフの金丸さんはこう答えてくださいました。「本当においしいものを食べたとき、言葉は出なくて、笑ってしまうことがありますよね。そんなとき人は、『おいしい』を通り越して『うれしい』という気持ちになっていると思うんです。そんなおいしさの向こう側にある、うれしい気持ちになれるようなプリン、という気持ちを込めて名付けました。」確かに、とてもおいしいものを食べたとき、「おいしい」をとばして嬉しさだったり感謝の気持ちを抱いてしまった経験は筆者にも心当たりがあります。「おいしい」を引き出すだけにとどまらず、その奥の「うれしい」に瞬時につながる味。「うれしいプリン」とは、そんな心の奥深くに届くおいしさのプリンだということがわかりました。

◆「マハカラ」という名前の由来は?
パッと聞き、洋菓子屋さんとは思えない店名。その由来お伺いしました。金丸さんいわく、「語源はインドのサンスクリット語で大黒様を表す『マハー・カーラ』からきています。もとは実家が『大黒』という店名でお好み焼き屋をやっていて、調べたら大黒様は“厨房の神様”だったんです。そこから、自分のお店に『マハー・カーラ』と名付けたのですが、お客さんには『マハカラ』と縮めて呼ばれることが多かったので、正式に『マハカラ』としました。」とのこと。ご実家の名前を継いでいたんですね。インドを感じる名前は、カレー屋さんと間違えられることも多いとか。

プリンの黄色であって、カレーの黄色ではありません
プリンの黄色であって、カレーの黄色ではありません

◆「日本一こだわり卵」との出会いは?
マハカラのプリンには、親鶏のエサや飲み水、飼育環境などにこだわって生産されている「日本一こだわり卵」が使われています。兵庫県にある「日本一こだわり卵」の養鶏場は、金丸さんの奥さんのご実家の近所。おいしく、しかも地元産のものということで採用が決まりました。また、お店では「日本一こだわり卵」そのものも販売されています。

プリンに使われている「日本一こだわり卵」黄身が濃い!
プリンに使われている「日本一こだわり卵」黄身が濃い!

たまごかけ醤油とともに、卵そのものも販売中
たまごかけ醤油とともに、卵そのものも販売中

◆マハカラとプリンの歴史
「マハカラ」は、もともとイカ玉焼きの居酒屋でした。プリンを作り始めたのは、卵料理のランチプレートを作る際「卵でデザートと言ったらプリンしかないでしょう!」というのがきっかけ。おいしいと評判になり、昼間に居酒屋の出窓からの販売をスタート。やがて「もっとゆったりとした環境で作りたい」と考えるようになり、専用の厨房スペースを取った新しい店舗を構えました。そう、実は「マハカラ」は2軒あるのです。もともとのお店もすぐ隣で、「いか玉焼き道場 まはから」として営業しています。(なお、取材の際はじめ間違えて入ってしまったところ、スタッフの方に丁寧に案内していただきました。)

プリン専門の店舗を構えるにあたっては、スタッフで120~130種類ものプリンを試食し、その中でも「自分たちが一番好きだ」と思えるプリンを改めて作り上げました。今では平日300~400個、週末は500個、目黒川がにぎわうお花見の時期には1000個以上ものプリンを、毎朝お店で手づくりしています。考えてみれば、ふた付きの瓶に入ったプリンは、お花見のお土産やお花見をしながらの食べ歩きにもぴったり。当日はあいにくの雨だったため畳まれていましたが、ふだんはお店の周りにベンチやイスが設置され、その場で食べていくお客さんも多いそうです。

入り口(右奥)や窓の下に設置されたベンチで食べても
入り口(右奥)や窓の下に設置されたベンチで食べても

目黒川がすぐそこなので、お花見時期は大忙し
目黒川がすぐそこなので、お花見時期は大忙し

◆おわりに
子どもの頃、風邪のときに食べたプリン。体調が悪いにも関わらず、そこには確かに「うれしい」気持ちがありました。そして大人になって食べた「うれしいプリン」。手間をかけられ、心がこもったとてもおいしいプリンは、大人になった自分に新しい「うれしい」をもたらしてくれました。シチュエーションは違っても、プリンはいつも私たちに「うれしい」気持ちを運んでくる。そんなことを教えてくれた、マハカラの「うれしいプリン」でした。