ここ最近すっかり秋らしくクールダウンした東京だが、まだ蒸し暑さが残っていた8月末、私(筆者)は涼を求めて本州最北端に位置する青森県下北半島・むつ市へ飛んだ。ちなみにむつ市は、あの松山ケンイチさんの故郷でもある。

そこで出会い、あまりの美味しさに一瞬にして心を奪われてしまった料理がある。下北半島に古くから伝わる郷土グルメ「みそ貝焼き(みそかやき)」だ。

下北名物「みそかやき」
下北名物「みそかやき」

もともとは陸奥(むつ)湾の漁師がホタテ貝を鍋がわりに、だしや魚の切り身などを入れて味噌を溶き、稗(ひえ)飯や粟(あわ)飯と一緒に食べていたというみそかやき。冷蔵庫に余っている材料で作れるので、“ものぐさな料理”なんて風にも紹介されている。

“ものぐさ”な料理?下北半島「みそ貝焼き」  (出典:むつ商工会議所 みそ貝焼き普及研究会)
“ものぐさ”な料理?下北半島「みそ貝焼き」
(出典:むつ商工会議所 みそ貝焼き普及研究会)

水を入れたホタテ貝を火にかけて、焼き干しからだしを取る。沸騰したらホタテや旬の具材を自由に投入して、味噌を溶き入れる。煮立ったら卵を流し込んで、なじませるように全体をかき混ぜればできあがりだ。

その完成形がこれ!  緑色のトッピングは三陸特産の海藻「まつも」
その完成形がこれ!
緑色のトッピングは三陸特産の海藻「まつも」

芳醇な香りの甘辛い味噌スープに、ホタテからたっぷり煮出された旨みが溶け込んでいる。そこに、とろとろ半熟の卵がまろやかさをプラス。この汁だけでご飯3杯はいける!

プリプリのホタテは、ぎゅっと身が締まっているのに、噛むと繊維がほろほろっとほどけていく。その柔(やわ)さと儚さが、また次の一口をそそる。

ご飯にもビールにも合う味
ご飯にもビールにも合う味

すごくシンプルな料理なのに、何だかわからないけれどめちゃくちゃ美味しい。旅情が隠し味になっていることを除いても、むつ市に行ったら絶対に食べた方がいいと断言できるくらい美味しい。

■ご当地スイーツには「フライボール」や「のむヨーグルト」も

地元の人たちによると、むつ市ではほかにも、お菓子工房「やなぎや」で販売されている揚げドーナツ「フライボール」や、ミルク工房「ボンサーブ」で搾りたての牛乳を使って作られる“超濃厚”な「のむヨーグルト」などが有名だそうだ。

中にはこしあんがたっぷり!
中にはこしあんがたっぷり!


「のむ」っていうかもはやヨーグルトそのもの
「のむ」っていうかもはやヨーグルトそのもの

■むつ市が元気なワケ

むつ市では、地元をさらに盛り上げようと20~30代の若者が中心となって「Discovery むつ project」というコミュニティを運営している。彼らはこれまでに「ホタル観賞会」や「大人の大運動会」といったイベントを企画しているほか、今年の6月には、5月下旬に亡くなった前むつ市長・宮下順一郎さんへ、感謝の気持ちを込めた「ひかりのアゲハ」を届けるイベントを開催した。

当日は有志の市民およそ500人が釜臥山スキー場に集まり、懐中電灯や携帯電話など思い思いの光を持ち寄って“アゲハ蝶”を作り上げたという。

「宮下市長、見えますか?」  (出典:Discovery むつ project)
「宮下市長、見えますか?」
(出典:Discovery むつ project)

街が生き生きしているように見えたのは、年長者も若い人たちも一緒になって地元の活性化や市政に取り組むポジティブな空気が感じられたからかもしれない。

なお、「ひかりのアゲハ」は人の手によって作られたものだが、むつ市には本当にアゲハ蝶の形をした夜景が見える展望台がある。美味しい食事のあとにはちょっと車を走らせて、デザートがわりにここでしか見られない夜景を堪能するのもいいかもしれない。

ここでしか見られない“アゲハ蝶”の夜景  (出典:Discovery むつ project)
ここでしか見られない“アゲハ蝶”の夜景
(出典:Discovery むつ project)