ビアトークキックオフイベント対談のイメージ写真
“若者のビール離れ”どう思う?

「若者のビール離れ」がうたわれるようになって久しい。そんな現状を打破しようと、7月、大手5社が参加するビール酒造組合は、SNSを通じてビールの魅力を発信する若者向けのキャンペーン「BEER TALK(ビアトーク)」をスタートさせた。

そのキックオフイベントで「若者のビール」をテーマとするシンポジウムが開催された。登壇者は、ビール酒造組合代表理事の水谷徹さん、「若者研究」で知られる博報堂ブランドデザイン若者研究所の原田曜平さん、そして“若者代表”の島袋聖南さん。

年齢も立場も異なるかれらは、「若者のビール」についてどう考えているのだろうか。

ビアトークキックオフイベント対談
左から、司会、島袋さん、水谷さん、原田さん

「若者のビール離れ」、どう思う?

原田 進んでいる面はあると思っていて。ただ、まったく飲まない人が増えているわけではなくて、朝まで飲むといったような、アルコールの摂取量自体が減っているというのが大きいのかなと思います。

1番の原因だと感じるのは、縦社会が減ってきていること。ビールって最初は苦いけど先輩に飲めっていわれて飲んで、だんだん味を覚えておいしくなるっていう。ありましたよね。

水谷 複雑な心境ですね。ただ、大学生と話をしていたら、(ビールを)飲みたがってるんですよ。「飲めるようになりたい」っていう言い方をする人もいるんで。やっぱり先輩とかが、お酒の楽しみ方やビールのおいしさを伝えるっていうのは、頑張んなきゃいけないかなと思って。

原田 ビールに限らず、よく、今の若い人は保守化しているっていわれていて。必ずしも悪い意味だけではなくて、例えば飲みに誘うと嫌がられるかなって思うのは一昔前で、意外と誘ってほしいって子の数値が増えていたりとか。

以前えん食べに掲載した記事でも、そういった趣旨の回答が多く寄せられていた。飲みに行くことそのものが嫌なわけではないのかもしれない。一方で…

島袋 私のまわりの同じ世代でも、そもそもお酒を飲んで酔っ払うのが好きじゃないっていうか嫌いな人もいて、理由を聞くと、「酔うとスマホでゲームができなくなる」とか、お酒を飲むことに対して抵抗のある人がいるんですよね。あとSNSで広くつながってると、飲み会の様子が拡散されちゃって、誘ってない人に申し訳ないし誰を誘ったらいいかわからないから、結局飲み会をしないって方が多いそうです。

原田 一緒にいる人以外にも気を使って、どう見られてるかって認識しながら24時間生きてるって大変ですよね。

苦みが苦手な「ピータータン」

話題はビールの「味」へ。ビールが嫌いな理由として、多くの場合、「苦いから」だといわれるが…。

原田 「ピータータン」(子どもの“舌”のまま大人になった人のこと/原田さんが提唱)で苦みが苦手になっていることは間違いないんですね。例えばスターバックスへ行ってもフラペチーノばっかり飲んでいたりするわけですね、若い人は。

そんなピータータンを象徴するかのようなデータがある。20代男女に好きなアルコール飲料をきくと、全世代平均よりビール類が低く、缶チューハイや梅酒、カクテルと回答した人が多いのだ。

ビアトークキックオフイベント対談、好きなアルコール飲料グラフ
若者世代は甘い酒が好き?

水谷 ビールについては本当に各メーカーさん努力されていて、ものすごく味の幅があって、醸造方法によって苦みを感じないビールが多く出ているんです。若い人に、「とりあえずビール」と思わずにいろんなものを試していただいて、「これなら好き」「これなら飲めた」を体験してほしいなと。

若者やビールが苦手な人の支持を集めたビールも存在する。「よなよなエール」などを手がけるヤッホーブルーイングから2014年に発売された「僕ビール、君ビール。」。期間限定だったが、いまではレギュラー商品として販売されている。

原田 あと、意外と知られていないんですけど、シャンディーガフ(注 ビールをジンジャーエールで割ったもの)を飲む若い人がとっても多くて。つまり、ただ単に甘いカクテルを飲むんじゃなくて苦みも必要で、かといってビールそのままだと苦みがあれなんで、きっと合うビールを探しきれていなくて。

例えばこんなこともありました。うちの研究所で、「乾杯するからピッチャーでお願いします」って言ったら、「原田さん、今の人はそういうのだめですよ、ひとりひとり聞いてくださいよ」って学生に怒られる。ところが次の日、その学生のSNSを見ると、「オクトーバーフェストなう」っていってビールを飲んでいる写真をのせてるんですね。

だから、居酒屋にあったビールは彼女にとってはクラシカルで自分に合わないけども、フェスにあった飲み物は自分に合うと思った。僕からすると矛盾なんですけど、彼女はあまり矛盾を感じていないんです。

「ビール離れ」を防ぐ対策はある?

原田 特効策なんてものはそもそもなくて、いろんなことがあるなかでも、写真や動画っていうのが新しい動機として出てきているというのがまずひとつ。

水谷 ビアガーデンで、顔を寄せて撮れるようなもの(注 おそらくインスタグラム風フォトフレームのこと)を用意しているんですけど、それがSNSで拡散するんですよね。そうやってビールを飲んで楽しそうにしているシーンが広がって、私もやってみたいなっていうのが、大事なことだと思います。

島袋 原田さんがおっしゃったように、SNS映えするパッケージってすごく重要だと思うんです。例えばBBQするときに、かっこいいデザインだと、焼き串と一緒にSNSに写真をアップして、ビールがおしゃれアイテムになる気がするんですよね。だから、「とりあえずビール」じゃなくて、「特別なビール」というチョイスができればと思います。

原田 もうひとつ、「これは若者向けのビールですよ」って開発が大事だと。いまの若い人たちは、自分たちが社会の主役じゃないっていう意識が根本的に強いんですよね。だから、“ビール会社の人が本気でやってますよ”って出してくれたら、のってくると思います。

“「とりあえずビール」ではなく”という言葉が、ビールをつくる側と“若者”の両方から出てきたことが印象的だった。そして、何度も出てきた「SNS」というワード。めまぐるしく社会情勢が変化するなかで、ビールのあり方が変わっているのかもしれない。

どちらかといえば若者世代にあたるが、ビール好きな筆者にとっては、少しでも“食わず嫌い”が減り、“自分に合う”ビールを気軽に飲む同世代が増えてくれたら嬉しい。