「Bean to Bar(ビーン トゥ バー)」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。いま、世界のチョコレート界で話題になっているワードです。日本では昨年(2015年)のバレンタイン頃から聞かれるようになり、今年はさらに注目度が増しています。

世界を巻き込んだトレンドBean to Bar。でも、正体がよく分からないBean to Bar。そこで、この連載では、日本におけるBean to Barのパイオニア「Minimal(ミニマル)」を例に、3回に分けて“Bean to Barの世界”をご紹介します。

第2回は、Bean to Barチョコレートのなかでも、産地や品種ごとに異なるカカオでつくられたチョコレートを味わう「シングルオリジンの楽しみ方」について。

“カカオ違い”を楽しみませんか?

Bean to Barは、カカオ豆の仕入れから商品化までを自社で行なう製造スタイルです。多くはカカオ豆と砂糖だけでつくられるので、よりカカオの個性を生かしたチョコレートづくりが可能となります。

◆味わい、いろいろ

Minimalによると、Bean to Barチョコレートの特徴について、大きく次の5つのキーワードをあげられるといいます。

(1)素材の多様性
いわゆるシングルオリジン。産地や品種によって異なるカカオ豆の“素材の味”が表現されています。

(2)作り手
同じカカオを使っていても、作り手によって味やデザインが異なります。さまざまな素材を組み合わせるボンボン(一口サイズのチョコレート)のように、作り手の個性が出るのだとか。

(3)融合
素材のカカオがはっきりしているからこそ、素材が生きるコーヒーやワインなどとの“ペアリング”や“マリアージュ”で、奥深い世界が生まれます。

(4)美容・健康
カカオにはポリフェノールがたっぷりと含まれていることから、美容や健康を気にする人からも支持されています。注目度上昇中のスーパーフード「カカオニブ」も、カカオ豆を砕いたものなんですよ。

(5)出来たて
チョコレートにも“フレッシュさ”はあります。自社工房で製造するところが多いBean to Barだからこそ、出来たてを手に取れるという特徴が。たとえ2週間でも風味が変わるそうで、その変化も楽しみのひとつなのだとか。

◆五感で味わう

チョコレートにも、お酒のように“テイスティング”する方法があります。

まずは「視覚」。チョコレートの色味やツヤなどを観察します。続いて「嗅覚」を使って香りを楽しんだら、「聴覚」でチョコレートを感じます。適温で保存されているチョコレートを割ると、パリッとよい音をたてるそうです。そして「味覚」で風味や味わいを感じとっていきます。また香りには、初めに感じてすっと消えるファーストノート、“温かみのあるアロマ”が基本のボディノート、余韻として感じられるラストノートと、ワインと同じように移ろいがあるそう。

もちろんチョコレートの楽しみ方は自由ですが、じっくりと向き合うことで新たな発見があるかもしれません。

◆好みも、いろいろ

実際に、“カカオ豆と砂糖のみ”のチョコレート「Minimal Flight 2016(ミニマル フライト2016)」を試食しました。3大陸8か国のカカオ豆でつくったチョコレートがセットになったバレンタイン向け商品です。

ポストカードを組み合わせたようなパッケージデザインがオシャレ

ラインナップは「ニカラグア」「ハイチ」「コロンビア」「タンザニア」「マダガスカル」「ガーナ」「インドネシア」「ベトナム」。いずれも、カカオ豆の産地から名付けてあります。

ピンと来るのは「ガーナ」でしょうか。某チョコレートの商品名としてもなじみがありますよね。実は、日本のチョコレートの7~8割はガーナなのだとか。しかしMiniamalのそれは、イメージするガーナとは別物でした。ドライフルーツのような香りがしたと思ったら、じんわりとカカオの苦みが染み込んでくる…複雑な“変化”を感じられます。これがカカオ本来の味なのでしょうか。

日本で流通しているチョコレートのほとんどはミルクや生クリームを混ぜてあるため、“カカオと砂糖だけ”となると、全く別物のように感じてしまうのだそうです。チョコは好きでも、ガツンとカカオを感じるBean to Barチョコレートは苦手…という人もいるのだとか。

試食に戻りましょう。8つのうちもっとも印象的だったのは「ハイチ」でした。アーモンドのような香ばしさのなかに甘酒みたいな発酵感があり、不思議な感覚。また「インドネシア」からは、現地の料理を思い起こさせるスパイスを感じました。この特徴を引き出すために、わざとザクッとした“豆感”を残しているのだとか。鼻に抜けるスパイスの香り、筆者はかなり好み。ワインとあわせたい味わいです。

「ニカラグア」は、はじめに“みずみずしい”花の香りが。渋みが繊細なためか、酸味を強く感じがちなようですが、みずみずしさと酸味のバランスがとてもよく、さわやかな気分になれた一品でした。

初めて食べたBean to Barチョコレートは、乳製品のコクがないぶん、それぞれが持つ香りや味わいの変化までダイレクトに感じられたという印象。コーヒー豆をそのままかじるイメージが近いかもしれません。

◆“食べ比べ”で世界が広がる

シングルオリジンの楽しみ方、いちばんのおすすめは、やはり食べ比べでしょう。同じショップのカカオ違い、はたまた同じカカオのショップ違い。いろいろと並べて、味だけでなく色味や香りの違いも楽しんで。五感全体でカカオを味わうのが、Bean to Barの世界。

(最終回の第3回は、2月1日に掲載予定。Bean to Barメーカーのなかでもユニークな「Minimalのチョコレートづくり」についてご紹介します。)