京都をはじめとした関西地方でおなじみの「西京(さいきょう)味噌」。白味噌の総称と思いがちですが、もともとは特定メーカー(味噌蔵)の銘柄。商品名があまりに広く普及したため、類似品も含めた一般的名称となっているようです。「ホッチキス」や「魔法瓶」などと同じですね。

「西京味噌」って、特定の味噌の銘柄なんです  (画像出典:西京味噌公式サイト)
「西京味噌」って、特定の味噌の銘柄なんです
(画像出典:西京味噌公式サイト)

ちなみにメーカー名も同様の「西京味噌」。京都・室町一条で約200年前に創業した本田味噌本店の流れを汲む味噌蔵です。


そんな本家の西京味噌を使ったパンが、銀座のベーカリー「ブーランジェリー レカン」に期間限定で登場しているとの情報をキャッチ。西京味噌×パンの組み合わせとはいかに?気になったので、お店へ確かめに行くことにしました。

■西京味噌のパンを求め、銀座のブーランジェリー レカンへ

レカンの場所は地下鉄東銀座の駅を出てすぐ。青いテントが目印です。

レカンに到着!
レカンに到着!

本当にパン店?と不安になるほどの格式高い店構えは、フレンチレストラン「ロテスリーレカン」を併設しているから。レストランで食べておいしかったパンをテイクアウトできたらいいよね、というのがブーランジェリー レカンのなりたちなのです。どちらも約1年前にオープンしたお店ですが、おおもととなるレストラン「銀座レカン」は、1974年創業の老舗です(銀座レカンは現在休店中)。

ドアをくぐると、左手はパンの販売スペース、右手はレストランの入り口となっています。

入って左手がパンの販売スペース
入って左手がパンの販売スペース

商品棚とレジが一体となったカウンター。スペースは小さくても、並ぶパンの種類は豊富です。クロワッサンなどのデニッシュ系、ミニサイズのカンパーニュ、チョコやキャラメルなどを練り込んだ甘いマフィン、チャパタやコーンブレッドなど。※写真は開店直後(10時半頃)のラインナップ

オープン時から種類豊富
オープン時から種類豊富

そのほか、後ろの棚にバゲットやカンパーニュ、

バゲットは後ろの棚に
バゲットは後ろの棚に

カウンターに向かって左側、入り口に面したショーケースにサンドイッチやケーキなどが並んでいます。

サンドイッチやケーキなども
サンドイッチやケーキなども

目当ての西京味噌を使ったパンは2種。「西京味噌とナッツのタルティーヌ」(税別350円)と「西京味噌&ハラペーニョ」(同280円)です。さて、どんなパンに仕上がっているのでしょう?

西京味噌のパン、発見!
西京味噌のパン、発見!

■西京味噌とナッツのタルティーヌ

カンパーニュをフレンチトーストにして、バターと合わせた西京味噌を塗り、ナッツをのせて焼き上げたもの。

「西京味噌とナッツのタルティーヌ」
「西京味噌とナッツのタルティーヌ」

ナッツがこぼれないように気を付けてひと口かじると、しっとりやわらかな生地と、ザクザクと香ばしいナッツのコントラストが鮮やか。

生地はしっとりやわらか
生地はしっとりやわらか

噛み進めると、バターと合わさった西京味噌の上品な風味に加え、ナッツの香ばしさが口の中でどんどん増幅。ほんのり甘いパンと混じりあい、口の中すみずみにおいしさが満ちていきます。甘さや塩気ではなく、コクによるくっきりとしたおいしさが新鮮な一品。

■西京味噌&ハラペーニョ

フォカッチャ生地にハラペーニョとチーズを練り込み、生地の間に西京味噌を塗り焼き上げたもの。手にすると、ずっしりとした持ち重りがします。

「西京味噌&ハラペーニョ」
「西京味噌&ハラペーニョ」

ぱりっと乾いて香ばしい表面に反し、内側はしっとり。ぎゅっと目が詰まって、むちむちとした噛みごたえがあります。

下の方の黒いのがハラペーニョ
下の方の黒いのがハラペーニョ

西京味噌は生地の間にたっぷりとサンドされ、タルティーヌに比べ主張強め。とろりとした口あたりで、独特の芳醇な風味を放っています。生地に練り込まれたチーズとも好相性。

太白胡麻油を合わせた西京味噌のペースト
太白胡麻油を合わせた西京味噌のペースト

噛むごとにハラペーニョが効いて、あと味までピリ辛。

塩気が少なく、ほんのりと甘みのある西京味噌。どちらのパンにおいても、小麦の味わいを活かしつつ、上品なコクと風味を添えていました。パンとの相性の良さに加え、レシピの良さがあるのでしょう。そこで、レシピ考案者でもあるブーランジェリー  レカンのシェフ・割田さんに、気になることを聞いてみました!

■ブーランジェリー レカン シェフの割田さんにインタビュー

えん食べ:今回は西京味噌を取り入れたパンを作られましたが、レシピを考える際に悩んだ点などありますか?

西京味噌のパンは、どのように誕生したの?
西京味噌のパンは、どのように誕生したの?

割田さん:もともと味噌とパンは、どちらも発酵食品で相性は良いんです。ですのでレシピ自体というより、どうやって見慣れない組み合わせをお客様に受け入れてもらうかで悩みました。たとえばフォカッチャ生地の方は、もともとハラペーニョのパンとして置いていたものに西京味噌を加える形にして、シリーズものっぽく見せたり。

えん食べ:なるほど。レシピのアイデアを出す際、参考にするものなどはありますか?

割田さん:“活字”が多いです。本やブログの文章など、気になったものを記録しておいて、『このストーリーをパンに置き換えたらどんなレシピが生まれるだろう?』と考えたり…。表に出すわけではないのですが、ストーリーやバックボーンなどをイメージしてレシピを作っています。その方が芯が通って、いいものができると思っています。

ひとつひとつのパンにストーリーを…
ひとつひとつのパンにストーリーを…

えん食べ:クリエイティブ全般に応用できそうな考え方ですね。では西京味噌のパン以外で、人気商品があれば教えてください。

割田さん:バゲットやカンパーニュなどシンプルなものや、「コーンブレッド」(とうもろこしのパン)、「赤ワインのカンパーニュ」シリーズあたりでしょうか。赤ワインのカンパーニュは、ワインを搾った後のぶどうをピューレ状にして練り込んだもの。季節に合った具材入りのものも出しています。

ミニサイズもあるコーンブレッド
ミニサイズもあるコーンブレッド

ふんわりしっとりとした食感と、コーンのほのかな甘みが楽しめる
ふんわりしっとりとした食感と、コーンのほのかな甘みが楽しめる

ほのかにぶどうが香る赤ワインのカンパーニュシリーズ
ほのかにぶどうが香る赤ワインのカンパーニュシリーズ

フルーティな風味の生地に、栗やイチジク、くるみがゴロゴロ  (写真は「赤ワインのカンパーニュと栗」)
フルーティな風味の生地に、栗やイチジク、くるみがゴロゴロ
(写真は「赤ワインのカンパーニュと栗」)

割田さん、お話ありがとうございました!
割田さん、お話ありがとうございました!

伝統的な和食材ながら、パンと組み合わせてもおいしい西京味噌と、老舗レストランへの期待に応えながらも、遊びごごろを加えたパンを生み出す割田シェフ。両者はどこか似ているようにも感じられました。

なお西京味噌のパン2品は、1月末までの販売予定となっています。新年のお出かけで銀座周辺に行かれた際には、ぜひお見逃しなく。

店舗所在地:東京都中央区銀座5-11-1 1F
営業時間:10時30分~21時