新しく始まった NHK 朝の連続ドラマ「ごちそうさん」。劇中に登場し、主人公のめ以子をはじめ子どもたちの舌と胃袋を虜にした「オムライス」がすごく美味しそうでしたね。あれ、食べてみたいですよね。

あのぷるんぷるんのオムライスを口いっぱいほおばりたい...
あのぷるんぷるんのオムライスを口いっぱいほおばりたい...

め以子の両親が経営する洋食屋「開明軒(かいめいけん)」のモデルなのではと密かに噂されているのが、日本橋にある老舗洋食屋「たいめいけん」。ということは、たいめいけんに行けばあのオムライスが食べられるということか...!?これは行って確かめるしかない!食いしん坊ぞろいのえん食べ編集部、早速たいめいけんへ向かいました。


日本橋の一角にある昔ながらの洋食屋「たいめいけん」
日本橋の一角にある昔ながらの洋食屋「たいめいけん」

■日本橋たいめいけんに到着

たいめいけんは、地下鉄日本橋駅から地上にあがり、歩いて1分のところにありました。

お昼ちょうどに到着
お昼ちょうどに到着

お昼の12時頃だったのでかなりの行列を覚悟していたのですが、実際に並んでいたのは4~5人。若干の肩透かしをくらいつつも最後尾に並んでいると、待つこと約10分で店内に案内されました。筆者は一人だったのですが、3人以上で行くと席の関係上もう少し待たされるようです。

■早速オムライスを注文してみる

メニュー拝見。想像していたよりも豊富なバリエーションで一瞬本来の目的を見失いそうになりましたが、店員さんの「お決まりですか」の言葉で我に返り「オムライスをいただけますか」と真っ直ぐに伝えました。すると店員さんから「どちらのオムライスになさいますか?」との逆質問が。えっ...オムライスって一種類じゃないのか... しかしここは成熟した大人 たちが集う古き良き街・日本橋の老舗洋食屋。動揺を顔に出さないよう「一番有名なオムライスはどれですか?」と切り返しました。店員さんによると『タンポポオムライス(伊丹十三風)』が有名で人気もあるとのことだったので、これを選択することに。

ちなみにこのユニークな名前のオムライス、 あの伊丹十三さんがアイデアを出したことからその名前が付いたらしいです。そういえば確かに『たんぽぽ』っていうタイトルの伊丹十三映画、ありますよね。ケチャップライスにオムレツが乗っていて、オムレツを切り開いてライスと一緒に食べるタイプのものです。

豊富なオムライスメニュー
豊富なオムライスメニュー

何はともあれ無事に注文も済んだので、待ち時間を使って店内の様子を観察してみましょう。

■店内は常に満席 ビジネスマンが7割

店内は常に満席
店内は常に満席

かなり広い店内は見事に満席です。客層は、7割が30~40代のサラリーマンという印象。その他に女性カップルが数組、そして筆者同様おひとり様ランチを楽しむご年配の方がちらほらいました。昼からビールを飲んじゃうビジネスマングループも。

初めて訪れたと見られるお客さんは、筆者同様オムライスを頼んでいるようでした。一方、何度か来たことがある人、常連の人はラーメンやフライものを食べているように見受けられました。オムライスを食べている人が意外と少なかったのには驚き。メニューが豊富なので、何度来ても違う味が楽しめそうです。

■ボルシチとコールスロー率100%(えん食べ調べ)

実は事前に「たいめいけんでは、みんな当然のようにまずボルシチとコールスローを注文する」という情報を得ていた筆者。なんとその値段は創業当初から変わらず各50円(!)ということだったので、せっかくだからと注文してみました。ふと周りを見渡すと、全テーブルにボルシチとコールスローが...!

まさかの注文率100%(えん食べ調べ)
まさかの注文率100%(えん食べ調べ)

ボルシチは、サラサラっとしたスープに、キャベツ、じゃがいも、ニンジンが一口サイズで入っています。口に含んだ瞬間ふわっとトマトの酸味が広がる、昔懐かしい素朴な味。余計なものは入れず、野菜だしたっぷりな家庭の味でした。冬はボルシチの季節ですし、これからの時期にますます恋しくなる味ですね。

コールスローは、千切りではなく一口大のざく切りキャベツ。ほどよい酸味と甘みが効いたドレッシングがたっぷりとかかっていて、後半はもうキャベツがドレッシングにヒタヒタに浸かっています。ピクルスに近いお漬物感覚でも食べられるので、お口直しにもいいかも。

■ついにタンポポオムライス登場

ついに主役の登場!
ついに主役の登場!

12時19分。ついにめ以子になる瞬間がやって来ました。注文してからオムライスが届くまでの時間は約7分。写真を撮る時間すらもどかしい、この黄金色に輝く誘惑。それではこれより、開きの儀を執り行う――。

そのツヤ肌にぷつりとナイフを入れ、思い切って一筋のホライズンを描くと、中からとろっとろの花弁(半熟卵)たちが花開きます。そして開花した卵はふんわりとケチャップライスを包み込み、その姿はまるで陽だまりに咲くタンポポそのもの。

これを開いた姿はご想像にお任せします
これを開いた姿はご想像にお任せします

注文してからたった7分でこれが作れるなんて...シェフの方たちに拍手喝采です。おっと、タンポポがお待ちかねだ。それではこれより、掘削の儀を執り行う――。

■この卵、飲めます

一人分に卵を3個使っているというこのオムライス、中を開くと、ふわふわとろとろの半熟です。シンプルだけどコクのある素材そのものの味で、塩っ気やダシの味はあまり感じませんでした。ケチャップライスはまさに“母の味”。「ごちそうさん」に出てきたようなシンプルなケチャップライスに、一口大のチキンがコロコロとたくさん入っています。そして、特筆すべきはなんといっても食感でしょう。懐かしい味とは対照的な、斬新な口当たり。程よいモチモチ感のあるケチャップライスと、口の中で溶けるとろふわ半熟卵が絶妙にマッチング。ボリュームもたっぷりでした。

■平日は15分~30分待ち、土曜日は1時間待ちも

店員さんにどの時間帯が一番混み合っているか聞いたところ、平日はお昼の12:30頃からがピークとのこと。筆者が行ったのは平日の12:00頃ですが、確かに食事中の12:30頃には外に長い列ができていました。おそらく15~30分待ちといったところでしょう。また、土曜日は11時のオープン前からお客さんたちが並び始め、開店と同時に満席になるそうです。その店員さんによると、午後3時~5時のあいだは比較的空いているため狙い目とのこと。特に土曜日は、長いと30分~1時間待つ場合もあるそうです。

■朝ドラ「ごちそうさん」との関係、真相は?

先ほどとは別の店員さんに「 NHK の朝ドラ放送効果でお客さんは増えましたか?」と聞いたところ、「関係ないですね、いつもこんな感じ(の混み具合)です」と言っていました。...おや?でも、ネットでは話題になっているよね?と、例の噂について突っ込んでみると「はあ、そうみたいですねえ」と何とも冷めた回答。「その噂を聞いて食べに来られたお客様もいるんですが、私はそんな話全く知らなかったんです」とのこと。なんという温度差。店員さんたちはこの噂を特に気にしてはいないようです。ちなみに、この時間帯はお昼時のピークだったにも関わらず、店員さんたちは忙しい手を止めて筆者の質問に真摯に答えてくださいました。そんな親切で温かい店員さんも魅力の一つですね。

■結論

どうやら今のところ、「ごちそうさん」のモデルがたいめいけんだという事実は公としてはないようです。が、筆者の個人的意見としては、たいめいけんの元祖名物オムライスが少なくともドラマに出てくるオムライスのヒントになっているのではないかと思います。ほらね、見た目もそっくり。

朝ドラ「開明軒」のオムレツ (出典:NHK「ごちそうさん」)
朝ドラ「開明軒」のオムレツ (出典:NHK「ごちそうさん」)

こちらが「たいめいけん」のオムライス。似てますよね?
こちらが「たいめいけん」のオムライス。似てますよね?

め以子がアレンジしたオムライス (出典:NHK「ごちそうさん」)
め以子がアレンジしたオムライス (出典:NHK「ごちそうさん」)

ただひたすらに、創業当時からの味を受け継ぐ覚悟と心意気も感じられました。なんとも漢気あふれるお店じゃありませんか。こんなお店でごはんを食べたら、いっそう生きる力が湧いてきそうですね。

もし本リポートを見て「たいめいけんに行ってみよう!」と思い立った方は、ぜひこの元気が出るオムライスを食べてみてください。思わず笑顔がこぼれてしまうと思います。そうそう、お通し代わり(?)のコールスローとボルシチもお忘れなく。そして食事に満足したら、お会計時に「ごちそうさん」の一言を添えて、感謝の気持ちを伝えてみてはいかがでしょうか。