そんなことを考えていたら、東五反田のある一角に「たい焼き」を売る中古レコード屋があるという情報が入ってきました。レコードとたい焼きだと?...ザワザワ... しかし、筆者の中の誰かが言いました。そういうお店にはお宝が眠っているに違いない、と。とりあえず、秋といえばたい焼きだし。そういうわけで、早速真相を確かめるべくお店に行ってきました。
■たい焼き屋の顔を持つ輸入雑貨屋「ダ・カーポ」に到着
五反田駅から5分ほど歩いたところに輸入雑貨屋「ダ・カーポ」はありました。オフィスビルやマンションの中で、ひときわ目立つ『中古 CD ・レコード』の看板と『たい焼き』の文字。そして、ガラス戸に貼られた数々のエルヴィスたち。恐る恐る店内に足を踏み入れると...目に飛び込んできたのは「たい焼きのご注文はこちら」のウェルカムボード。
ボードに導かれるままにカウンターへ。メインメニューである「たい焼き」「鯛玉」「鯛うどん 夏ver.」の3種類を注文しました。
■永遠のアイドル、エルヴィスに見守られながら焼く
たい焼きを作っているところも撮影させていただきました!エルヴィスが見守る中、こだわりのたい焼き作り。じっくりと拝見いたしましょう。
まずはたい焼きの生地を型に流します。刷毛でしっかりと伸ばしてから、それぞれ中に「あん」を入れていきます。
「たい焼き」には、お店自慢の100%十勝産小豆をたっぷり入れます。それはもう、たっぷりと。と、ここまでの工程は他のたい焼き屋さんと同じなのですが...
突然、予想外のアイテムが「しっぽ」の部分にそっと入れられました。あまりにも手際が良いので、危うく見落としてしまうところでした。それをたい焼きに...?しかもそんな大胆に...!しかしそのまま右と左のタイがバシっと合わせられ、アイツは見えなくなりました。このモザイクアイテムこそが、たい焼きをさらに美味しく、楽しく、飽きずに食べられるようにと考えられた秘訣なのだそう。詳しくはぜひお店で確かめてみてくださいね。
続いて「鯛玉」。まずは伸ばした生地の上に、卵をポトン。塩コショウで味を整え、水菜とベーコンを入れたら、左右の生地を合わせます。さらに少し火を通してから型を開くと...美しいたい焼きが登場!隠し味のマヨネーズの艶かしい香りが、さらに食欲をそそります。
そして、いよいよ「鯛うどん 夏ver.」。お母さんがなんとも涼しい表情で生地にふりかけたのは、なんとバジル。たい焼きにバジルなんて、おしゃれすぎる...!少し焼いてから、カレー風味のひき肉をどどどっと投入。そしてたっぷりのチーズを乗せます。こちらも最後に秘密のアイテムをしっぽ部分に入れていました。
■いざ、実食!(頭から食べてね)
さて、待ちに待った実食タイム。まずは定番の小豆から。
見てください、このぎっしりつまった小豆。一口ほおばると、優しく上品な甘さが口いっぱいに広がって...あらっ、ここは京都祇園だったかしら...
この小豆、店主さんのご主人が日本中の小豆を食べ歩いてようやく巡り会えたものなんだそう。和菓子用なので口当たりが軽く、モチモチの生地とよく合います。小豆業者さんもダ・カーポのファンで、よくたい焼きを食べにくるのだとか。プロをも虜にする究極の味、食べてみたくなってきたでしょ?そして最後は、しっぽに隠れているアレに到達。ああ、新感覚。みなさんにも味わって欲しい、この感じ。
続いては、鯛玉に挑戦。ふたつに割った瞬間、とろ~り卵が溶け出して来ました。待て待て慌てるでない。今から食べてやるぞ。
これは新しい!いや、具の組み合わせ自体はむしろおなじみの“ハムエッグ”様なのですが、これをたい焼きに入れるという発想が新しいんです!とろりん半熟卵とペッパー風味のベーコンにシャキシャキ水菜をトッピングして、それをモチモチ生地で包み込む、という二重三重の合わせ技。さらに、マヨネーズがしっぽのごまの香ばしさを後押し。天才じゃないですかお母さん...!
さて、小豆と鯛玉にすっかり「参りました」状態の筆者が最後に挑むのは、カレー味の鯛うどん。字面だけ見るともはや何のことだかわかりませんね。
ほろほろと惜しげもなく溢れ出すキーマカレーあん。その間から、とろんと糸を引くチーズがお目見え。なんとも食欲をそそる光景だと思いませんか。そのままかぶりついてみると...事前に「辛いですよ」と言われていたのである程度覚悟はしていたのですが...あれ?おかしいな、目から汗が...。正直に言います。美味いです。ただ、めちゃくちゃ辛いです。水を持ってこなかったことを激しく後悔しながらどうにかしっぽ部分までたどり着きました。すると、次の一口で...あ、あれ?辛さが緩和された!その理由はもちろん、食べてみてのお楽しみです。
この「鯛うどん」、実は五反田の隠れた名店「カレーの店 うどん」さんとのコラボ商品だそうです。どっちだよ!と突っ込みたくなるこのお店、スープカレー屋なんです。うどんはおいてません。カレーうどんもおいてません。ちょっとややこしいので、こちらは別で後日レポートしたいと思います(たぶん)。
■気さくなお母さん店主
このお店の魅力の一つは、やっぱり看板レディのお母さん。義理のお姉さんとお店を切り盛りしているのだそう。薄々勘付いていましたが、エルヴィスの大ファンだそうです。メディアでもたびたび取り上げられる人気店なのに謙虚な姿勢を崩さず、とても気さくな方でした。その一方で「他の店と同じことはしない」「うちはファストフードではない」と、こだわりを貫くお母さん。カッコいいです。エルヴィスみたいです。多少時間がかかっても、こうやって一つ一つ丁寧に焼くことで、ほっくほくの出来立てをお客さんに食べさせたいんですって。ええ待ちますとも。待てない者、食うべからず。
■よく見るとエルヴィスだけじゃない、昭和の懐かしレコードたち
ここまで読んでくださったみなさん、思い出してください。ここは輸入雑貨屋なんです。今やその人気ぶりから、たい焼きの売上がうっかり雑貨のそれを上回ってしまったようですが、もともとメインは輸入雑貨屋の方なんです。ということで、店内の雑貨にも少し触れてみたいと思います。
壁や棚には輸入物の LP レコード、昭和の歌謡曲 CD 、昔懐かしいロックスターのポスターがぎっしりと。ちなみに店中に飾られたエルヴィス雑貨の中には、お客さんからのプレゼントも多いんですって。お母さん、愛されてますね 。
■おまけのビッグニュース
取材中、終始店内に流れていたのはゲーム「ドラゴンクエスト」のオーケストラ CD 。実はドラクエの作曲家として有名なすぎやまこういち先生も、ダ・カーポのたい焼きの大ファンなのだそう。今日もお電話でお話されていたほどの仲の良さ。なんと、お店でお忍びサイン会を開いたこともあるんですって!サラリと重大発表をしてくれましたが、お母さん、それすごいことですよ!!
そんな隠れた魅力たっぷりのダ・カーポ。ちょっとした工夫や気遣いが、お客さんの心を掴んで離さないのでしょう。取材中も入れ替わり立ち代わりお客さんが入ってきていました。たい焼きを食べたい方、エルヴィスに会いたい方、都会の喧騒からひととき逃れたい方、盗んだバイクで走り出したり窓ガラスを割ったりしていたあの頃を懐かしみたい方、ぜひお店に足を運んでみてください。キラキラ輝くあの日の思い出とエルヴィスのポスターは、いつまでも色あせないのです。
住所:東京都品川区東五反田1-3-10 明河ビル 1F