2013年9月15日。この日の東京は台風18号の影響で、関東の一部地域に避難勧告がでるほどの大荒れのお天気となりました。でも、そんな荒天の下、新宿のとあるビルの地下二階では、90名を超える観客の方々が、お酒を飲みつつ、女性2名のパンケーキ談義に耳を傾けていたのです。

例えば、こんなパンケーキについて語り合っていました!
例えば、こんなパンケーキについて語り合っていました!
 
この日、新宿ロフトプラスワンでは、トミヤマユキコさんと寺嶋由芙によるトークイベント『狂気×愛×パンケーキ×ゆるキャラ!~マニアックでごめんなさい~』が開催されていました。

豪雨にもかかわらず、満員の店内!
豪雨にもかかわらず、満員の店内!

パンケーキ・ノート』でおなじみのトミヤマユキコさんの今回のお相手は、アイドルであり、早稲田大学でのトミヤマさんの教え子でもあるという寺嶋由芙さん。寺嶋さんは、トミヤマ先生の講義では「Aプラス」という成績を修められた優秀な生徒さんなのだそう。さて、どんなお話が繰り広げられたのでしょうか?

トミヤマユキコさん(左)と寺嶋由芙さん(右)
トミヤマユキコさん(左)と寺嶋由芙さん(右)
 
ここではこの日のトークイベントの第一部、トミヤマユキコさんによるパンケーキについてのお話の、ほんの一部をお伝えします。

お二人の対談は、『パンケーキ・ノート』執筆の裏話からスタートし、その後、トミヤマさんから寺嶋さんへの、そして会場にやってきたお客さんに向けての、『パンケーキ・ノート』出版後に発見したパンケーキ店の紹介へと進みました。

イベントは、乾杯で始まりました
イベントは、乾杯で始まりました
 
■『パンケーキ・ノート』での、お店選択の基準とは?

トミヤマさんは2010年頃から年間200食ペースでパンケーキを食べ続けられているそう。でも、『パンケーキ・ノート』で紹介されているのは、その中から厳選された100点のパンケーキでした。その選択の基準はどこにあったのでしょうか?

トミヤマさん:執筆時に、お店選択の基準になったのは、おいしいのは当たり前なんですけど、お店の人が怖くないというのも、実はすごく大事にしました。

人気店で、一般のお客さんへの対応が悪いとこって、結構あるんです。人気があり過ぎて、お客さんが来るのが当たり前だし、一人一人のお客さんの顔が見えていない。見る余裕もないみたいで…。一番ひどいところだと、どことはいえないのだけど、新人いびりがひどくてお客さんに丸聞こえって店もありました。

寺嶋さん:新人いびり?お店の店員さんの?

トミヤマさん:そう。私、パンケーキ店には一人で行くことが多いので、カウンター席に通されることが多いんですよ。そうすると、厨房の様子が全部見えるし、全部聞こえるの。

「あなたには、脳ミソがあるんですか?」とか、店のマスターが店員さんを叱りつけているのが聞こえちゃうんです。

寺嶋さん:うわぁ、そんな人のパンケーキ、食べたくない!

 
トミヤマさん:そうなんです。目の前に運ばれてきて、悲しい気持ちになりながら食べるのは辛いです。パンケーキはおいしいんだけど、耳から入ってくる情報があまりにもきつい。

「おまえ、ちゃんと考えてやっているのかよ。脳ミソはあるんですか?」

みたいな言葉がずっと聞こえてくるの。でもね、叱られている新人さん、大したミスはしてないんですよ。お水とおしぼりを出すタイミングがちょっと遅れたとか、その程度だから、「ちゃんとしてね」って言ってあげれば済むことなのに、脳ミソあるんですかは、きついなと。

そういうお店は、たとえ美味しくても載せてないっていうのが、私の本の特徴です。

良いお店っていうのは、おいしいだけではなくて、お店の人がやさしかったとか、そういういうことも込みだと思うので。

■『パンケーキ・ノート』執筆後に発掘したお店は?

トミヤマさん:私の場合、パンケーキの食べ歩きは趣味なんで、本が出た後も、パンケーキの食べ歩きは続けています。

これが、プロのフードライターだと、次々本を出さなきゃいけなくて、いまごろ毎日一所懸命フレンチトーストの食べ歩きとかをしていたりするんでしょうけど、私の場合趣味なんで、相変わらずパンケーキばかり食べています。

なので、今日は『パンケーキ・ノート』執筆後に発掘したお店を紹介しようと思います。

寺嶋さん:(客席に向かって)これなら、まだ混んでないからいいかもよ。今が行きどきかもよ。だって、本になったりすると、並ぶもんね?

トミヤマさん:私ね、並ぶの嫌いなんだよね。

(客席の方々):わかる~!

トミヤマさん:わかるよね!!

寺嶋さん:並んでいる間におなかすきすぎて、すいてたことがわかんなくなっちゃうことって、ありません?あれ、もったいないですよね。

(客席の方):まして、一人だと特にね。ぼっちで並ぶのはきつい。

トミヤマさん:そう!私も調査は基本一人で並ぶんですよ。やっぱり、行列している人気店ってのは、4~5人のグループで並ばないときつい。もうアミューズメントパークと変わらないんですよ。

寺嶋さん:あ~、だから並びづらいのか!

トミヤマさん:あれ?寺嶋さんまだ若いのに、こっちの気持ちに寄り添っちゃった?(笑)

それでね、私はもう若者ではないので、行列ができる人気店、リア充が集まる人気店は、今は行く気がしないんですね(笑)。もうちょっと空いてから、一人で行こうかなと思っています。

今日、寺嶋さんに勧めるのも、頑張って行列に並ばなくても良いお店ばかりです。あとね、女子力高めのお店は外してあるから、男性の方も行きやすいと思いますよ。

■パンケーキ・ノートその後 Part I :寺嶋由芙さんに食べてほしいパンケーキベスト3

トミヤマさん:寺嶋さんにおすすめするにあたって、寺嶋さんのイメージを3つあげてみました。大学教員っぽくまとめてみました(笑)。

 

・正統派の可愛さ
本人を見ればわかりますよね。髪の毛さらさらの感じ。正統派の可愛さと言って良いでしょう。

・奥ゆかしくて賢い
アイドル業界、芸能界にいるとは思えない、奥ゆかしさと賢さ。寺嶋さんて、裏表がないんです。このまんま。さっき控室でいろいろ話しましたけど、「本当に申し訳ない」「本当にありがたい」みたいなことしか言ってないんですよ。ガチで奥ゆかしい人です。

・身体は細いが食は太い
結構食べるんだよね。何回かパンケーキ一緒に食べに行きましたけど、まぁ食べる。

以上が寺嶋さんのイメージで、今日はこれにあわせた店を考えてきました。

◆正統派の可愛さ:「24/7 coffee & roaster」

トミヤマさん:ここは打ち合わせで寺嶋さんをお連れしたお店なんです。渋谷パルコの斜め向かい側、タバコと塩の博物館隣にあるお店で「24/7 coffee & roaster」と言います。
 
正統派の可愛さを持つ「24/7 coffee & roaster」のパンケーキ
正統派の可愛さを持つ「24/7 coffee & roaster」のパンケーキ

会場:かわいい!

トミヤマさん:ここはね、パンケーキではなく、ホットケーキという商品名なんです。正統派の、日本の古き良き「ホットケーキ」。3段重ね。直径はそんなに大きくない。

寺嶋さん:でも、分厚いんですよね。ちっちゃいけど。あと、ここ、アイスコーヒーが可愛かった。陶器みたいな、面白い器に入ってましたよね。

トミヤマさん:そうそう。お抹茶を飲むような器の中に。

寺嶋さん:大きな氷がでーんと入っていて、全部が可愛いお店でした。

トミヤマさん:ここは、店内も落ち着いていて、寺嶋さんぽいと思いました。おいしいし、近場だし、良いと思います。

◆奥ゆかしくて賢い:札幌「六花亭」

札幌「六花亭」は、チョコレートで有名なので、みなさん知ってると思うんですが、その喫茶室が札幌に何店舗かあって、そこでこんなホットケーキが食べられるんです。
 
奥ゆかしくて賢い:札幌「六花亭」の「白翁流」
奥ゆかしくて賢い:札幌「六花亭」の「白翁流」

会場:おおおぉぉぉ!(という、どよめき)

トミヤマさん:なんていうか奥ゆかしいでしょ?しかもこれ、ちゃんとお皿の上にクロッシュで覆われて運ばれてくるんですよ。

クロッシュで直前まで湿気をちゃんと閉じ込めている。焼きたてのパンケーキを放置しておくと、ぱさぱさになっちゃうので、食べる直前までなんらかの形でフタをしとく必要があるんですが、六花亭では、そういうこともちゃんと考えられているんです。このお皿の感じもね。

寺嶋さん:六花亭っぽいですよね。

トミヤマさん:そう、六花亭っぽい。そうなんですよ。すごく良いお店。それでね、メニューに書いてある説明がまた渋いんです。「白翁流」です。創業者が通称「白翁」と呼ばれていて、その人が好きだったホットケーキということで、この名前がついたらしいんです。メニューの説明をちょっと読んでみますね。

「バターが大好きだった創業者小田豊四郎”白翁”は、焼き上がったホットケーキの裏表、そして間にもたっぷりと塗り込みました」

メニューには「白翁流」の文字が
メニューには「白翁流」の文字が

 
これはね、パンケーキのメニューとしてはとっても珍しいんです。普通はね、「北海道産の牛乳と小麦粉を使って丁寧に生地を練り上げ、銅版で焼きました」とか、書くもんなんですけど。

でもここには、そういうこと、まったく書いていないんですよ(笑)。ひたすらおじいさんのことしか書いてない(笑)。おじいさんのことを思いながら食べる、おいしいホットケーキです。

私が行ったのは、「円山店」なんですが、そこの一階では六花亭のお土産も買えるし、上には喫茶室があって、こういうのが食べられる。北海道に行ったときには、是非食べて欲しいなと思います。

◆身体は細いが食は太い:赤坂見附「トレーダーヴィックス」

トミヤマさん:ホテルニューオータニというホテルの中のレストラン「トレーダーヴィックス」です。ホテル内にあって、ちょっとハードルが高いとお思いの方もいるかもしれませんが、割とお値段抑えめ、気軽に行けちゃうお店です。

まずは写真を見てください。ちょっと見たこと無い感じじゃないですか?

「トレーダーヴィックス」の「The Elvis」(写真出典:トレーダーヴィックス)
「トレーダーヴィックス」の「The Elvis」(写真出典:トレーダーヴィックス)
 
寺嶋さん:それって、バナナと?

トミヤマさん:フレッシュバナナと、その上にかかっているのが、トロッとしたバニラベースのピーナッツバター。さらにその上に茶色いプツプツがのっかっているのが見えると思うのですが、これがベーコンビッツなんですよ。

寺嶋さん:へぇ~。じゃ、甘いのと、しょっぱいのが一緒にくる?

トミヤマさん:そう、一緒にくる。で、その横についてくるのが、イチゴジャムだったかな?

トレーダーヴィックスというお店は世界中にあるんですが、この「The Elvis」というメニューが食べられるのは、多分、ここニューオータニ店だけじゃないかと思うんです。

でね、ニューオータニのトレーダーヴィックスの支配人「ラリー」さんという方が、子どもの頃アメリカに住んでいたときに体験した朝ご飯の味、つまり「ママの味」が、甘いものとベーコンみたいなしょっぱいものを組み合わせた味だったらしいんです。

寺嶋さん:「マックグリドル」みたいな?

トミヤマさん:そうそう、そんな感じ。そういうのを家で食べていたのを思い出して作ったのが The Elvis。支配人のラリーさんがね、片言の日本語で、

「ボクのママの味をパンケーキにしたよ」

って説明してくれたんですけど、もう最高ですよね!

ただね、このパンケーキはお腹にたまるんです。量がすごく多くて。
 
身振り手振りを交え、熱く語るトミヤマさん
身振り手振りを交え、熱く語るトミヤマさん

寺嶋さん:バナナもお腹にたまりますよね?

トミヤマさん:そうなんですよ。バナナって、ものすごく胃にたまるっていうか、お腹を埋め尽くす食べ物なんですよ。そこに、このパンケーキが加わるわけ。ピーナッツバターもおいしいんですけど、結構重たいしね。

なので、これは、胃袋がかなり頑丈な人に食べて欲しいと。実は食が細くない寺嶋さんなら、ペロッといけるであろうと思ったわけです。

生地はもちもちで、すごいおいしいですよ。なので、是非食べて欲しいです。

お店の内装は、ディズニーランドで例えると、ジャングルクルーズみたいな。人生で2回くらいしか行ったことがないディズニーランドでなぜたとえるのかわからないけど(笑)、そんな雰囲気があります。

寺嶋さん:アマゾンとか?

トミヤマさん:アマゾンとか、ポリネシアンとか南国ぽいんです。ホテルなのに、お店の入り口を入るといきなり異空間が広がっていて、で、こういうパンケーキがでてくるというちょっと変わったお店です。

というわけで、私から寺嶋さんにおススメしたいお店は以上でした。

『パンケーキ・ノート』後の最新パンケーキ事情 その2 に続きます)