今夏、コンビニやスーパーなどのアイスケースに潜り込むなどして、その様子を撮影→ Twitter や Facebook などに投稿→拡散→炎上する騒ぎが続発しています。当人は「ネタとしてやっている」という感覚でしょうけれど、店舗や利用客にとっては大迷惑。当人を含め誰もハッピーにならない、まことに悪質極まりない行為です。そんな“ネタ”、あっていいわけがない。

騒動を起こした人に対し、世間からは非難の声が相次いでいます。テレビのニュース番組などでも取り上げられており、もはや知らない人の方が少ないかもしれません。しかし、この局面において、“それでもアイスケースに潜り込みたい人”はどうすればいいのでしょうか?


大人達はいつだってずるい。叩くだけ叩いて、本当はどうすべきだったのか、ほかの手段を教えてくれやしないんだ。社会に安心を、若者に夢を。本稿では一歩進んで、“誰にも迷惑を掛けずに思う存分アイスケースと戯れる方法”を示します。

●マイ・アイスケースを買おう!

一週間ほど沈思黙考したところ、「自前のアイスケースを使えばいいのでは?」というナイス・アイデアを導き出すことができました。世の中、しょせん金なんですよね。まず合法的な手段で以って100万円ほど用意しましょう。学生だったらバイトでもして貯めてください。……大人はずるい?厳しいだけだ甘えるなっ!!

100万円貯まったとして。次にあなたがすべきことは業者に連絡を取ること、ではなく、「この100万円、アイスケースよりもっとほかに使い道があるのではないか」と考えることです。(自前の)アイスケースにダイブすることでネット上での有名人になれるかもしれないし、学校でも人気者になれるかもしれない。でも皆よりちょっと賢いクラスのマドンナは、そんなあなたに“結局なにをしているのか分からない行政機関”を見るかの如き視線を向けるかもしれません。「その金で他にできることないの」、と。

ひょっとすると、この100万円を勉学や趣味に投資するのが賢明かもしれません。これが契機となり、将来、得意分野で大成したあなたにはビッグマネーが転がり込みます。そうなれば、上質なアイスケースを自宅に納まりきらないくらい買えるし、なんなら最高にクールな特注アイスケースを誂えてもいい。「僕のアイスケース、超クール(笑)。アイスだけに(笑)」と SNS に投稿してみれば、それを見た元クラスのマドンナは狂ったように“いいね!”を連打、「ASAP で結婚しましょう」とあなたにラブコールを送り、同日中に“区役所デート”でめでたくマリアージュと事が進むのも想像に難くありません(ASAP=As Soon As Possible/できるだけ早く)。

ここまで読んで、それでも決意が揺らがない場合は、ヤフオク!で手早く探すことをお勧めします。キーワードは「冷凍ショーケース」がグッド。横長の寝そべりやすそうな型がいくつか出品されているので、きっとあなた好みの製品が見つかると思います。

潜るなら自前で用意しろ  [出典:ヤフオク!「サンデン 冷凍オープンショーケース」]
潜るなら自前で用意しろ
[出典:ヤフオク!「サンデン 冷凍オープンショーケース」]


●アイスを詰めよう!

伝えたいことは伝え尽くしたので以後は蛇足となりますが、さて、アイスケースが届いたら中身を詰めましょう。市販の氷菓を使うと「食べ物を粗末にするな!」→炎上となる可能性が高いので、“雨水をかき集め、念のため濾過し、適当な大きさに冷凍したもの”をビニール袋に入れて使用するのが無難かと思います。このように炎上リスクは常に付きまとっているので、最後まで気を引き締めて頑張ってください。

●アイスケースの向こう側

目的を達することができて嬉しいあなた。けれどちょっぴり虚しいあなた。ひとしきりダイブして、寝そべって、Twitter で 700RT くらいされて複雑な気持ちになって、気が済んだところでヤフオク!に出品。クラスのマドンナには軽蔑され、後輩からは“アイスケースの人”と呼ばれる毎日。「アイスケースになんて関わらなければよかった」、そう独りごちても落札されないアイスケース。

もっと早く気付くべきでした。「アイスケースは“ネタ”に適していない。オフラインでも炎上するほどに」。

“ネタ”は、周囲に悪影響を与えないものでなければなりません。目立とうとするのは構いませんが、SNS に投稿する前に、その行為が誰かの迷惑にならないか、誰かを笑わせられるほど面白いか、実は詰まらないのではないか、詰まらない上に二番煎じなのではないか、「立派なネタができました」と胸を張って墓前に報告できるか、いま一度立ち止まって考える必要があります。

お金がなければ難しいことも多いかもしれません。しかし、その制約のなかで試行錯誤して生まれたものこそ、他人を惹きつける本当の面白さがあります。おいしいアイスを食べながら、じっくり、考えればいいのです。

(文:京都三条 糸屋のむすめ)