ただひたすら食事をするシーンを描いた漫画『孤独のグルメ』(久住昌之作/谷口ジロー画/扶桑社)など、“食べる楽しみ”を追求した作品を多く見かけます。

そんななか、食欲や料理欲、さらに読書欲まで刺激してしまうという、ちょっと変わった料理本が発売されました。
 
細川亜衣「食記帖」/リトルモア
細川亜衣「食記帖」/リトルモア

料理家・細川亜衣さんによる「食記帖」(リトルモア)は、東京から熊本へ嫁いだ細川さんの、日々の生活を綴った日記をまとめた1冊。その日の献立や食べたものが作り方とともに紹介されているのですが、『想像しながら読んで欲しい』との思いから、写真がまったく使われていません。それにも関わらず、読んでいると出来立ての美味しそうな料理が目の前に浮かんでくるのです。


例えば―――

畑のスパゲッティ 昼前に収穫した野菜で子供たちの大好きなスパゲッティを作ってみる。太りすぎのモロッコいんげんは固くなったさやを外し、豆だけをスパゲッティと一緒にゆでる。ピーマン、さやいんげん、ズッキーニは粗く刻み、つぶしたにんにく、オリーブ油、粗塩とともに蒸し炒めにする。柔らかくなったらズッキーニの花を刻んで加えてさっと火を通し、ざるに上げた豆入りのスパゲッティとあえ、刻んだバジリコとしそを混ぜる。オリーブ油の質は今ひとつだったが、それすらも野菜の香りがかき消す。(本文より抜粋)

さぁ、みなさんの『妄想』の中ではどんなスパゲッティが出来上がりましたか?

細川さんはイタリアで生活していたこともあるそうで、あまり見かけることのない調味料や食材、調理方法などもたくさん出てきます。また、旅先で出会った食材や、季節の野菜、お店で食べたもの…日々の生活の中で出会う様々な食事からは、“ひとりの人間”が日常生活を送っていることを感じさせられます。

料理そのものだけでなく、その料理が並ぶ食卓や、食べている人の表情や息遣いまで目に浮かぶ、まさに“読む料理”。休日にのんびりと楽しみたい1冊です。