江戸の趣が残る神楽坂も、新宿区内。閑静な路地にひっそりと佇むお店の数々には胸が躍ってしまいますよね。そんな神楽坂で、「金曜の晩に OL が注文するという、長崎名物トルコライスがあるらしい」という情報を入手。…んんん? 神楽坂で OL ?長崎名物? トルコ? 全然結びつかないぞ?き、気になる!
■神楽坂に到着!
やって来ました、神楽坂。ゆるやか~な坂の両脇には商店街が立ち並び、飲食店に食品や雑貨を売るお店など個性豊かで、東京ぶらっと散歩には外せないエリアでございます。うーん神楽坂、やっぱり素敵。
■「トルコライス」を食べられるのは、2丁目食堂トレドです。
本日の目的地は、神楽坂下近くの複合施設 PORTA の中にあるという、喫茶店「2丁目食堂トレド」。まだ真新しい PORTA の少し奥まで進むと…ありました! 2丁目食堂トレドです!
■トレドは老舗でした。
お店の周りには手書きのメニューが所狭しと貼られています。1枚1枚ものすごい情報量で、ものすごい熱量です。圧倒されそう。何はともあれ、入店。
実は2丁目食堂トレド、創業1972年という老舗。再開発によりいったん閉店となった2009年までの37年間、継ぎ足し続けたカレー「継ぎ足しカレー」が名物の喫茶店なのです。その後、新たに PORTA の中に入って営業を再開し、カレーも新たにストックを開始したそうです。なるほど~。
東京理科大、法政大などのご近所からはもちろん、ちょっと離れた早稲田大からも学生が訪れ、40年もの間愛され続けたお店なのです。そして、このお店にはずっと学生を見守ってきた名物マスターがいらっしゃいます。手書きのメニューはマスター作で、いいものを食べてもらおうとするマスターの愛情の表われなんですね。この親しみやすさと温かみはなるほど、学生に愛されるお店の雰囲気ならではです。
と、トレドの歴史を学んだところで、メニューを再びチェック。もちろん今日のお目当ては、トルコライス。作る様子を少々覗かせていただきました。
■ところで、トルコライスってなに?
トルコライスの発祥は長崎と言われています。その発祥時期は高度経済成長期の頃だとか。まだ洋食が珍しかった当時、贅沢な洋食を一度にたくさん食べたい! という思いの元、生まれたものだそうです。
■でも、トレドのトルコライスは一味違う
トレドでトルコライスが出されるようになったのは、学生からのリクエストがきっかけだったそう。長崎出身の学生が、故郷の名物・トルコライスを作ってくれないかとオーダーしたのがはじまりだったとか。
トルコライスは、一般的には「ナポリタン」「カレーピラフ」「豚カツ」の3種が盛られているのものだそう。でも、トレドでは「豚カツ」の代わりに自慢の鶏を使った「チキンカツ」、「カレーピラフ」のかわりに名物の「継ぎ足しカレー」を使い、ちょっと豪華なトルコライスを完成させました。
ナポリタ ン、カレー、チキンカツと、人気メニューが1皿に乗った豪華なトルコライス。見た目のインパクトはものすごい! そして、ナポリタンのケチャップが炒められた香ばしい香り、カレーのスパイシーな香り、チキンカツの食欲をそそる香りが一緒になって、なんというか、鼻が幸せ…。
どれから食べようか迷ってしまうのも、トルコライスならでは。トレドのメニューにも「大人のお子様ライス」と書いてありましたが、まさしくその通り。迷いましたが、揚げたてのチキンカツから。いただきます!
■そのお味は?
かじってみると、サクサクの衣の中からじゅわ~っと鶏のうまみが! 何これ、ものすごい美味しい! 絶妙な揚げ加減で衣は本当にサクサク、揚げたてでジューシーな鶏も柔らかく…本当に絶品。こんなにおいしいチキンカツ食べたことあったかな…舌が幸せ…、 と思わず涙目になります。それもそのはず、チキンカツに使われている鶏肉は、マスターの奥様の実家である国産専門の鳥問屋から直で仕入れたものを使用しているそう。納得のクオリティーでございます。
続いて名物の継ぎ足しカレー。見た目はお袋の味とでも言うようなまろやかな感じで、最初の一 口目はそのイメージ通りのやさしい味。とろっとよく煮込まれたルーには野菜や果物の甘みが感じられ、美味です。野菜はほとんど煮込まれて原型がないのですが、お肉はごろっと入っています。これがまたよく煮込まれて柔らかい。しかしこれ、食べ進めていくと、意外と辛い…! クセになる味でスプーンが止まらないカレーです。
そして、ナポリタン。ケチャップって炒めるとどうしてこんなにいい香りになるのでしょ う。口に運ぶと、ああ~、ザ・ナポリタンです…。これこそ…これこそ、ナポリタン…! 思わずため息。玉ねぎ、ピーマン、お肉のバランスも良く、甘酸っぱいケチャップの配分も完璧。昭和の味、レトロな味です。いやはや、これは素晴らしい。
■金曜の晩に OL がやって来る、その理由とは?
ところで、どうして金曜の晩に OL がトルコライスを食べるのでしょう? マスターに尋ねてみました。
マスターいわく、OL さんは奢ってもらう時にはちょっと気取った、少量しかない上品でオシャレなメニューを頼むけれど、自分のお金で注文するときにはガッツリ食べられる、値段以上の価値があるメニューを頼むんだよね、とのこと。う、うん…、私にも思い当たる節がありすぎますね…。
マスターは大変気さくな方で、 お店に初めてやってきたお客さんともすぐに会話を弾ませていました。きっと春になれば、やってくる学生との会話で店は大変にぎやかになるんでしょうね。筆者もついつい長居をしてしまいました。古きよき老舗の伝統の味と温かみを感じられる名店でございました。
■新宿区でもっとも面白い食べ物
さて、えん食べはこの「トルコライス」を「新宿区でもっとも面白い食べ物」と(勝手に)認定します。由来は面白く、美味しい、そしてハートフルなトルコライス。足を運ぶ価値のある一品です!
でも、でも、新宿区在住の方で、「もっと面白い食べ物を知ってるよ!」という方、是非我々に教えてください。えん食べ編集部員が食べに参りますよ!